午後6時から、芝増上寺で村木良彦さんの通夜に出席。
夕暮れどき、鎌倉からの車中で『お前はただの現在にすぎない』という本を読み続けた。
TBSを離れて、「テレビマンユニオン」を作った萩元晴彦・村木良彦・今野勉の3氏による名著だ。1960年代末、「テレビに何が可能か」を追及したこの本を越えるテレビ論は、その後書かれていない。
オラが筑摩書房を退社し、ユニオンに転じたきっかけは、この本だった。入社面接の時、社長だったのが村木さんだった。
全く新しいビジネスとしての番組制作会社の経営、数々の番組の演出とプロデュース、ニューメディアの可能性を追求する新会社「トゥデイ・アンド・トゥマロウ」の設立、MXテレビ局の開設、大学の教壇に立ってメディア論を講じ、「あるある問題」などの審議会、番組の審査・・・、書斎を愛する文人の一面をもちながら、あまりにも自己を酷使しすぎたか。
先の本のなかで、彼は次の文章を記した。それだけで、その生涯は十分に意味があった。ありすぎた。
「テレビジョンはフィクションもノンフィクションもひっくるめて、すべてドキュメンタリーである。ドキュメンタリーそのもの。かくて、ぼくのテレビジョンにとって、次の仮説が採用される。<テレビジョンは時間である>」
村木氏の人柄、実績をしのんで、通夜には多数の人々がつめかけた。別室での懇親の席で懐かしい面々に会う。今野勉さんと、名著の復刊について、具体的出版社名を挙げて語り合う。