石井信平の 『オラが春』

古都鎌倉でコトにつけて記す酒・女・ブンガクのあれこれ。
「28歳、年の差結婚」が生み出す悲喜劇を軽いノリで語る。

映画「Yoyochu」

2011-02-20 12:49:10 | 映画
きっかけ

週末は物凄い偶然が続けざまに重なった結果、私の尊敬する代々木忠監督を題材にしたその名も“Yoyochu"というタイトルのドキュメンタリーを渋谷のアップリンクに観に行ってきた。http://www.yoyochu.com/

ここまでの経緯がすごくて、私は信平ちゃんの見えざる存在をひしひしと感じた。これは明らかに信平ちゃんが導いたとしか思えないような話だ。

帰国してから、信平ちゃんのブログにアップする記事を数ある雑誌から選ぼうとしていた。たまたま目の前にあったアエラを手にしたら、それは「現代の肖像」で代々木忠監督を信平さんが取り上げだ号だった。その数日前に代々木さんの話を代々木さんを知らない友人に熱く話していたこともあって不思議だなと思った。


「スケベなオヤジつづけてゆきます 代々木忠」
その1
http://blog.goo.ne.jp/shinpeishii/e/7f07e84d01ad1459149f807f91909998

その2
http://blog.goo.ne.jp/shinpeishii/e/ef2745b78a8b54da19872ae71100dc72

代々木忠監督といえば、アダルトビデオ界では、知らない人は居ない存在だ。(私は重鎮だとかカリスマのような言葉が嫌いなのでそうは書かない。)

私は信平さんと付き合ってすぐの頃に読んだこの記事がキッカケで代々木忠という人間のファンになった。アダルトビデオという手法で人間や愛と誠実かつ真摯に向き合ってきた人だ。その生き様、男気に私は惚れた。

今でも尊敬している人はと聞かれれば、石井信平(もちろん!)、大杉栄、代々木忠監督と応える。そのうちの二名はもうこの世に居ないが。

何か意味を感じて私は迷わずこの記事を帰国後第一弾としてブログに上げることに決めた。

ブログについたyuusukeさんのコメントでたまたま「Yoyochu」というドキュメンタリーが上映している事を知った。不思議なタイミングだなと感じてそうTwitterでつぶやいた。

そこから、この映画の配給会社を経由して、この映画を撮影した監督の石岡正人氏からご挨拶頂いた。

@azkoishii @yoyochumovie 「Yoyochu」監督をしたモノです。石井さんの記事、参考にさせて頂きました。お亡くなりになったとお聞きして残念に思いました。観て頂きたかったです。こうしてツイートできるなんて凄く嬉しいです。是非御覧になって下さい。

石岡正人氏からのメッセージで、信平さんの記事を映画の参考にしたと聞いた。もうそれだけで嬉しかった。

その晩、代々木忠監督ご本人からTwitterでメッセージが届いたのだ。そこには、

azkoishii 代々木忠と申します。石井信平さんがお亡くなりになられたことツイッターで 知りました。僅かな期間ではありましたが、濃密な時を持った日々が思い起こされます。 ビーエムのバイクで走り去る彼は、何時でもカッコよかった。合掌。
twitter.com/ATHENAEIZOU/status/37786417018970112

と書かれていた。僕は感動のあまり膝が震えた。

そんな不思議な経緯があって、まさに導かれるように昨日ちょうど代々木監督と西川美和監督のトークショーがあるというので、渋谷のアップリンクまで映画を見に行く事になった。混み合うとの事で、席まで確保して頂いていた。ありがたかった。

映画について

この映画では、人間が一番むき出しになってしまう性という題材を通して、愛と真摯に向き合ってきた一人の男、代々木忠の半生が描かれている。代々木監督を中心とした関係者のきめ細かなインタビューから構成され、代々木監督と石岡監督の信頼関係と緊張感が程よい距離間を産み、実に見ごたえのある作品だった。


既に代々木さんのことを信平さんの書いたドキュメンタリーで知っていた私にとっては、代々木忠監督のその後を知る事ができた。それから、記事ではタイトルでしか分からなかった作品が映像では当たり前だが、ホンモノを見る事ができる。やっぱり映像は強いなぁと思わされる。

そして、愛について改められて考えさせられる。代々木忠という男気を支えた女たちの存在は大きい。特に奥さんの思いを想像しただけで息苦しくなるほどだ。これだけの男を支えるのは命がけだ。

代々木忠監督の作品は、人が社会で貼られたラベルを剥がして行くところから始まる。監督自らカメラを持ち、男優と絡む女たちに低音で響き渡る声で、その時に的確な声をかける。それは相手の存在を認める言葉だ。

そうやって私たちをがんじがらめにしている常識という檻やプライド、羞恥心、恐怖心などを徐々に剥いていったその奥にはピュアなその人間本来の姿が現れる。だから、女たちや男たちはオーガズムに達した後、赤ちゃんのようにむせび泣く。代々木作品では上辺ではない本気のセックスが見れるのだ。

初めて代々木作品を観た時を思い出した。その時もガツンと強い衝撃を受けた。「愛ってなんだ?」である。好きでもない男がセックスをしていく経過でかけがえのない相手になって行く様を観たからだ。もちろん、その感情が長期に渡って持続するわけではないのだが、私の愛への概念や常識がガシャーンという音と共にガラスが砕け散るように崩れ去った瞬間だった。

映像の中の代々木さんの声はまるで父親のような懐の深さと愛に満ちている。だから、女たちは身を委ね自分自身をさらけ出せるのであろう。それと同時に、その言葉は絶対に服従してしまう有無を言わさぬ厳しさも秘める。「まるで神の声だな」と思った。代々木作品の中では確かにそんな存在なのだ。

だから、出演する男優や女優にとっては、今までの表面的なセックスじゃない自分の中身もさらけ出すセックスをする代々木作品はチャレンジであろう。

本気の見当たらなくなった今の日本にこの作品はカンフル剤となりうるか。本気のセックスが出来ていないそこの貴方、パートナーとしっかり向き合うきっかけとしてこの映画は役立つ事でしょう。
http://www.yoyochu.com/

トークショーについて

意外だったのは、普段カメラを持っているから、カメラ無しで女性と対談するのは緊張するといった監督。監督自身はさらけ出していないのやもなんて思った。 是非一度、されけ出された代々木監督自身を見たいなという願望をもってしまう。

最後に会場で代々木監督が「石井信平さんの奥さんはいらっしゃいますか」と言われ手を上げた私に、「石井信平さんは、僕と初めて人間として向き合ってくれた人です。」とベビちゃんを紹介してくださった。監督の想いが嬉しくて、僕は公衆の面前でオイオイと泣きそうになった。

改めて信平君の精神を代々木忠監督を通して感じさせられた。感謝の気持ちでいっぱいだった。本当にありがとうございました。


最新の画像もっと見る

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。