石井信平の 『オラが春』

古都鎌倉でコトにつけて記す酒・女・ブンガクのあれこれ。
「28歳、年の差結婚」が生み出す悲喜劇を軽いノリで語る。

 マスコミはますます「戦時メディア」になってきた、

2013-06-13 23:59:00 | ルポルタージュ
月刊「宝島」連載コラム、2004年8月号掲載


いまは「戦時」である。かつて女性たちはモンペをはいて出征兵士を見送った。いま女性たちは、街でヴィトンのバッグとケータイを手に闊歩している。えらい違いや。本当に戦時か?

イラクという「戦場」に、今度は「多国籍軍」の一員として同胞の軍隊はい続けることになった。憲法違反を問うことさえしないメディアは、かの地で自衛隊が変なことをしてもバラしませんよ、同胞の安全と国益のためと「報道自粛」の協定にあっさりサインした。その反射神経が既に「戦時メディア」だ。

振り返ってみよう。政府に不利益な報道はしないまま戦争の「土壷」にはまり込むと、マスコミは昭和 年、「言論報国会」をつくって、自発的に国策のちょうちん持ちを始め、「うそつき」になった。一切の異論・反論がないまま、やりたい放題にカネが使える戦争は、政府にとってキモチのいい体験だった。

国家にとって戦争ほどありがたいものはない。見よ、ブッシュ大統領は「テロ戦争」を言いがかりに、「愛国法」をふりかざして監視社会を作り、国民のプライバシーより国家の安全を優先するアメリカに変えてしまった。軍産複合による巨大利益が、政権の中枢に還流する仕組みも作った。すべては「テロ戦争」のおかげだ。大統領、お中元の送り先リストにウサマ・ビンラディン氏を忘れないように。

6月13日に国会を通過した「有事関連七法案」は、みれば見るほど「日米一体・戦争法案」だ。その一つ「国民保護法案」では、 国民の「救援・避難」を政府が罰則付きで統制する。国民を保護ではなく「排除、動員できる」法案だ。いつ、何が有事かは国が決める。
そのためには民間空港、港湾、病院、公民館などを自衛隊、米軍が一緒に接収し使用できる。おいおい、それどころか、「いつでも、どこでも米軍に必要物資を届ける」という、まるでピザ屋のような法律だ。「予測される事態」のためには「民有地」だって米軍様に差し出す。一読して君の愛国心はズタズタに引き裂かれること請け合いだ。

国家財政と年金制度の破綻という「必ず来る有事」に国民からつるし上げられる前に、アメリカと一緒になって「テロ戦争」に巻き込まれよう。早く日本がテロの標的になって、国民を号令できる状況に持ち込もう。何だか事態はそういう方向に進んでいないか?

マスコミも自治体も政府の言うことをきけ。今度の有事関連七法案は言論の自由に対する挑戦ではないか。徹底チェックして大議論をするのがメデイアの使命だろう。ところが今回の法案が成立した翌日、日本民間放送連盟(日枝久会長)は「運用が適正に行われるよう注意深く見守る」と発表。とても言論人の集団とは思えない。法律とか契約、ハンコを押した後に「見守って」どうする? 

法案通過の6月13日、TBS「ニュース23」で筑紫哲也氏は大好きなNYからお気楽レポート。ヤンキーススタジアムでは松井の背番号「55番」のTシャツ を買って「これパジャマに使えるなー」と目尻を下げていた。

ジャーナリストのこのナイーブさは内閣記者会も同様だ。細田博之官房長官は三千百万円を越える運転手給与を日本道路興運という企業に肩代わりさせた「犯罪容疑者」である。しかし「総理から仕事をつづけるようにとのご指示がありました」以外なんの説明もしないまま、毎日、国家のスポークスマンを続けている。異様な「戦時報道風景」である。





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