未練気な太郎。
勝利 「じゃ、夜風は身体に障るから、帰った方がいいん
じゃないですか」
太郎 「だから今すぐどうこうなる訳じゃないって言ってる
だろう」
美樹 「お父さん、おじ様が心配するのは当然よ」
太郎 「だから俺は大丈夫なんだって」
勝利 「でも皆さんにこれ以上気を使わせちゃ何だから、ね
え、宮本先生」
美樹 「おじさまの言う通りよ。でもまだ何か話があるんな
ら・・」
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太郎 「なあ、光子」
光子 「!・・・・なにヨ」
太郎 「俺、お前と付き合うときに約束したよな、絶対に一
人前の絵描きになるって」
光子 「・・・ええ、そうね」
太郎 「俺はそれ以来ずっと前しか見てこなかった。脇目も
振らず自分の画業の事しか考えてこなかった。それは絵描き
の世界で一人前になる事が皆を幸せに出来る事だと信じてい
たんだ。・・・でも、お前は別れを切り出してきた。何で
だって思っ . . . 本文を読む
すっかり夜の帳が降りた横丁。
佐知 「ねえ、さっきの話ってカアサンの旦那の事なの?」
由美子 「元よ、元旦那」
佐知 「ああ、そうか。画伯って言ってたけど、画伯って絵
描きさんの事でしょう」
由美子 「そう、絵描きさんだよ。だって画伯だもの」
陣五 「ああ、サッチャン知らねえのか、カアサンが此処で
店やったいきさつ」
佐知 「聞いた事ないね」
由美子 「そうか。カアサン、滅多に自分 . . . 本文を読む
光子の娘の美樹が勝利の所から駆けつけて来る。
光子 「それじゃ、能書きなしで二回目の乾杯と行こうか」
陣五 「オイース」
光子 「それじゃ、乾杯!」
一同 「乾杯」
美樹 「ちょっと話があるの」
一同とは離れる光子と美樹。
美樹 「お母さん、怒らないで聞いてね」
光子 「なんだい」
美樹 「実はね。今日会社にいたら急に携帯なった
の・・・」
光子 「・・・誰から・・・ああ、勝 . . . 本文を読む
とんだドタバタの中,光子が現れる
陣五 「なあ、カアサン。先にやっとく」
光子 「そうだね、後は美樹と勝ちゃんだけだから、一回目の乾杯しちゃおうか」
由美子 「そしましょう、そうしましょう」
陣五 「静粛に」
光子 「ありがとう。・・・ええと、思えば二年前に区画整理の話が持ち上がってさ、まあ、すったもんだあって今日を
迎えたんだけど・・あたしは三十五年間ここにお世話になった訳さ、今 . . . 本文を読む