通せんぼ横丁に夜の帳が落ちてくる。
規制線を跨ぎ作務衣姿の「やんべえ」の店主の木村甚五が上手から下りて来て、自分の店の鍵を開け、扉を開け放ち看板の明かりを点す。二階の窓を開け放ち灯りを点す。次にカギを出し、バー「佐知」を開け、看板明かりを入れ、扉を開け放し、明かりを点ける。
陣五 「おお、ユミちゃん。早いじゃねえか」
由美子 「なに、店の灯り付けるのかい」
陣五 「いくら花火見物って言っ . . . 本文を読む
夕焼けに染まりつつある「通せんぼ横町」と階段。
宮本太郎が来て規制線を怪訝に思い看板を読む。
太郎 「横丁が立ち退きだあ?・・・何だ、こりゃ。どういう事だ」
階段を下りて、店を見て回り張り紙に見入る。
太郎 「閉店ってどういう事だ、移転ってどういう事だ」
娘の美樹が来る。
美樹 「お父さん」
太郎 「おお、美樹か。なんだ、どういう事だ」
美樹 「な . . . 本文を読む
一場ー3の続き。
努 「ええ。先生、照れ臭いのかおどけた口調で、これが最
後になるかもしれねえ、なんて縁起でない事仰いましてね。
何とか頼むのとの事でございました」
勝利 「江田君、宮本と光子さんとのいきさつは知ってるで
しょう」
努 「ええ、まあ。お嬢様の美樹さんが八歳の時に先生、光
子さんと離婚なさってフランスに渡った事は」
勝利 「私と太郎と光子さんは同じ時間を共有してきたんで
すよ . . . 本文を読む
佐知そ見送った光子と勝利。
勝利 「この横丁は、結構客が付いていた様だけど、店を続
けるのを決めてるのは、サッチャンとこと「やんべえ」だけ
ですか?」
光子 「今んとこ店を出そうとしてるのはそうみたいね。場
所の問題もあるし、また一からっていうのは結構きついから
ね」
勝利 「そうですね。若い人達は大体が居抜きで始めた人ば
かりですからね」
光子 「瑠璃の美子ちゃんは結婚するって言ってたわ . . . 本文を読む
佐知はすでに通せんぼ横丁を出てランタン通りに自分の店を作っていた。
佐知 「ああ、カアサン。あたし、大工さんに三時のお茶出
さなきゃならないからちょっと失礼するわね」
バックを持ってくる。
光子 「ああ、そう。どう、店の出来は」
佐知 「すんばらしくなってるわよ。ほら大家の倉本の爺さ
んが頑張ってごねてくれたんで、立ち退き料が割り増しに
なったじゃない。その分つぎ込んでるんだものそうで . . . 本文を読む