序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

劇団芝居屋第36回公演「通せんぼ横丁」第二場ー4

2018-12-09 21:21:13 | 覗かれる人生芝居


光子の娘の美樹が勝利の所から駆けつけて来る。
光子 「それじゃ、能書きなしで二回目の乾杯と行こうか」
陣五 「オイース」
光子 「それじゃ、乾杯!」
一同 「乾杯」


美樹 「ちょっと話があるの」
     一同とは離れる光子と美樹。


美樹 「お母さん、怒らないで聞いてね」
光子 「なんだい」
美樹 「実はね。今日会社にいたら急に携帯なった
の・・・」
光子 「・・・誰から・・・ああ、勝ちゃんから?」
美樹 「それが・・・お父さん」
光子 「エッ!」


光子 「帰って来てるの、あの人」
美樹 「そうなのよ」
光子 「まったく人騒がせな奴ね。で、何だって」
美樹 「だから、此処で会えって」
光子 「此処で?何でさ」
美樹 「知らないわよ。でも横丁がこんな風になっていたの
で驚いてたみたい。そこに倉本のおじ様から電話があって、
二人して会いに行ったの」

     二人の会話を素知らぬ顔で聞く一同。

光子 「全く相変わらず他人の事なんかお構いなしの人ね。
それで何だっていうの?」


美樹 「お母さん、お願いがあるの」
光子 「何だい、改まっちゃって」
美樹 「あの・・・お父さんと会ってあげてくれない?」
光子 「・・・・あんた、何言ってるか分かってるの」
美樹 「ええ、分かってる」
光子 「あんたは血の繋がった娘だし、もういい歳の大人だ
からあの人と会おうが会うまいが勝手だけど、あたしとあの
人はもう他人なの。もう関わりたくないのよ。分かる?」
美樹 「ええ、分かってわ。でも・・・」
光子 「あの人はあたしとあんたを自分のしたい事の為に、
捨てたんだよ。放っぽリ投げたんだ、ゴミくずみたいに。そ
れだけじゃない、どんなお偉い画伯になったかしらないが、
あたしの気持ちなんかそっちのけで自分の立場が変わった
ら、当然の様に夫面して、元に戻ろうなんて・・・あんな手
前勝手な男とは金輪際あたしゃ会わないから」

     消防車が続けて通り過ぎる。

美樹 「病気なの」
光子 「えっ?何だって」
     消防車通過。
美樹 「(大きな声)お父さん病気なの!」
        響き渡る美樹の声。
     凍る一同。

光子 「・・・病気?本当」
美樹 「ええ、本人から聞いたわ」
光子 「それで帰って来たの」
美樹 「ええ、そうみたい」
     おずおずと一同が近づいて来る。
     それに気づいた光子。
光子 「みんなちょっとゴメンね」

美樹と光子店に入る。
見送る一同。

第3場へと続く
撮影鏡田伸幸



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