Shell工房(スタッフブログ)

Shell工房は写本装飾好きのプチ職人7名のユニットです。波と砂に磨かれて輝く貝殻のように日々修行中!!

世界の写装から

2017-09-29 | 写本
『修道院のネコちゃんたち その1』
こんにちは。秋ですね〜
映画『ブレンダンとケルズの秘密』ご覧になりましたか?この映画にまつわるちょと深い話しです
主人公のブレンダンやエイダンの名前は初期ケルト系キリスト教の聖人だそうで、エイダンの白猫パンガ・ボン(Pangur Ban)も実在した猫の名前です。中世、修道院では、ネズミ捕りのために猫を飼っていたそうです。

ブレンダンのとなりにいるのがPangur Ban

ブレンダンが書いた写本のページのシーン

Pangur Banの意味は、白いまるまるとした、真っ白、白い桃など、諸説あるようですが、白ネコだったのは確かのようですね。
アイルランドからドイツのライヒェナウ島に定住した修道士(ピルミニウス?)が書き残している古アイルランド語の詩『Pangur Ban』がこちら。

ロビン・フラワーによる英語訳があります。
 
I and Pangur Bán my cat
‘Tis a like task we’re at;
Hunting mice is his delight,
Hunting words I sit all night.
 
Better far than praise of men
‘Tis to sit with book and pen;
Pangur bears me no ill will
He too plies his simple skill
 
Oftentimes a mouse will stray
In the hero Pangur’s way;
Oftentimes my keen thought set
Takes a meaning in its net.
 
‘Gainst the wall he sets his eye
Full and fierce and sharp and sly;
‘Gainst the wall of knowledge I
All my little wisdom try.
 
When a mouse darts from its den
O how glad is Pangur then!
O what gladness do I prove
When I solve the doubts I love!
 
So in peace our tasks we ply,
Pangur Bán, my cat and I;
In our arts we find our bliss,
I have mine and he has his.
 
Practice every day has made
Pangur perfect in his trade;
I get wisdom day and night
Turning darkness into light.


日本語訳(『ケルトの書』より 訳 大原ケイ)

私と猫のパンガー・ボン
取り組んでいるのは同じこと
彼の楽しみはネズミ狩りで
私は夜通し言葉を探し求めること
 
人から賛辞を受けるより
本と筆をとって机に向かう方がいい
パンガーも私を放ったまま
己の単純な技を磨くのみ
 
時おりネズミが
英雄パンガーの前に迷い出る
時おり私の思案が
深い意味合いを持ち始める
 
壁に向かって見据えるその眼は
深く鋭く獰猛で巧妙だ
知識の壁に向かう私は
ない知恵を絞って考える
 
ネズミが巣から飛び出すとき
パンガーのなんと嬉しそうなことか!
執着していた謎が解けたとき
なんと私は嬉しいことか!
 
平穏の中で精を出す
私と猫のパンガー・ボン
芸事に至福を見いだす私たち
私には私の、彼には彼の
 
毎日の鍛錬により
パンガーはその技を完璧にし
私は昼も夜も英知を増していく
闇を光に変えながら

絵本にもなっていますよ〜〜


***ickey***
我が家のパンガー・ボン(ネコちゃん)自慢のコメント、お待ちしております