総務省「介護保険事業等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」では、介護サービス従事者の現状について、詳細な分析を行っています。
今回は、従事者(介護労働者)の確保問題を取り上げます。
1.介護従事者等の処遇改善に関する法律を改めて強調
行政評価・監視の結果の文中で、あらためて「介護サービス従事者の確保については、平成20年5月に、介護従事者等の人材確保のための介護従事者等の処遇改善に関する法律(平成20年法律第44号)が成立し、介護を担う優れた人材の確保を図るため、21年4月1日までに、介護従事者等の賃金を始めとする処遇の改善に資するための施策の在り方について検討を加え、必要があると認められるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされている。」と記述し、確保法の趣旨に沿った措置を求めています。
2.介護サービス従事者の低賃金を明確に指摘
「勧告」は、介護サービス従事者と全労働者の収入を比較したものはないが、参考までに介護サービス従事者を含む福祉関係の従業員の給与額をみると、…低水準になっている。として
①全産業の男性労働者の年収試算額511万円に対し、男性の福祉施設介護員の年収試算額は315万円と低くなっている。
②全産業の女性労働者の年収試算額324万円に対し、女性の福祉施設介護員の年収試算額は281万円と低くなっている。」
と、指摘しています。
また、「介護従事者の年齢別月収入額は、世帯内での出費が増加する就学生を持つ年代にあっても給与は他の年代とあまり変わらない状況となっている。」としています。
(平成18年度介護労働実態調査―財団法人介護労働安定センターより)
年齢階層 平均税込み月収入額 人数
15~19 15万円 553
20~24 18万円 8841
25~29 19万円 13663
30~34 17万円 13338
35~39 17万円 12463
40~44 17万円 14006
45~49 17万円 14863
50~54 17万円 14906
55~59 16万円 14198
60以上 11万円 10500
無回答 15万円 4042
上記の介護サービス従事者の賃金状況を踏まえ、
「前述のような状況にあるにもかかわらず、厚生労働省においては、
①離職原因・未就業の原因の実態把握、どのような対策等が講じられれば就業するのかなどについての意識調査が未実施。
②介護サービス従事者の賃金の多面的・総合的な把握・分析が不十分及び
③介護サービス事業者の財務状況の分析が不十分。」
また、②の詳細については
「厚生労働省は、平成21年度に介護報酬の見直しを予定しており、給与、物価等の経済動向や地域間の給与格差等を勘案しつつ、介護サービス事業者の事業収入や介護サービス従事者の給与等の水準を含め介護サービス事業者の経営状態や介護サービス従事者の労働実態を把握すること等を通じて、国民の負担している保険料水準にも留意しながら、適切な水準の介護報酬を設定するとしている。
介護サービス従事者については、職種、年齢、勤続年数、性別及び保有資格の種類の区分による賃金の分析は行われているが、
① 例えば、職種・勤続年数ごと、職種・年齢ごと、勤続年数・男女ごと等複数の多面的・総合的な賃金分析は行われていない、
② 介護サービス事業以外の職種との多面的・総合的な比較は行われていない
ことから、介護サービス従事者を取り巻く環境の実態が明確に把握できるものとはなっていない。」
としています。
他にも、
「厚生労働省は、介護や福祉の分野の人材について、就業の有無、就業している場合の就業の現状、就業していない場合の理由や就業の意向について、平成20年度中に調査を実施する予定であるとしているが、その対象は、介護福祉士、社会福祉士及び精神保健福祉士であり、ホームヘルパーは対象としていない(注)。
(注) 現に就業しているホームヘルパーに対しては、財団法人介護労働安定センターが「平成19年度介護労働者の就業実態と就業意識調査」により意識調査を行っている。
このことについて、同省は、介護福祉士試験合格者の中にはホームヘルパーの資格を有している者も相当程度含まれていると考えられることから、当該調査によりホームヘルパーとしての意向等もある程度把握できるため、調査対象としていないとしている。
しかし、今後、前記の調査の結果等も踏まえつつ、ホームヘルパーを含む未就業の有資格者の就業を促進するための対策を講じていくことが重要である。」
との問題点を指摘しています。
(つづく)
今回は、従事者(介護労働者)の確保問題を取り上げます。
1.介護従事者等の処遇改善に関する法律を改めて強調
行政評価・監視の結果の文中で、あらためて「介護サービス従事者の確保については、平成20年5月に、介護従事者等の人材確保のための介護従事者等の処遇改善に関する法律(平成20年法律第44号)が成立し、介護を担う優れた人材の確保を図るため、21年4月1日までに、介護従事者等の賃金を始めとする処遇の改善に資するための施策の在り方について検討を加え、必要があると認められるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされている。」と記述し、確保法の趣旨に沿った措置を求めています。
2.介護サービス従事者の低賃金を明確に指摘
「勧告」は、介護サービス従事者と全労働者の収入を比較したものはないが、参考までに介護サービス従事者を含む福祉関係の従業員の給与額をみると、…低水準になっている。として
①全産業の男性労働者の年収試算額511万円に対し、男性の福祉施設介護員の年収試算額は315万円と低くなっている。
②全産業の女性労働者の年収試算額324万円に対し、女性の福祉施設介護員の年収試算額は281万円と低くなっている。」
と、指摘しています。
また、「介護従事者の年齢別月収入額は、世帯内での出費が増加する就学生を持つ年代にあっても給与は他の年代とあまり変わらない状況となっている。」としています。
(平成18年度介護労働実態調査―財団法人介護労働安定センターより)
年齢階層 平均税込み月収入額 人数
15~19 15万円 553
20~24 18万円 8841
25~29 19万円 13663
30~34 17万円 13338
35~39 17万円 12463
40~44 17万円 14006
45~49 17万円 14863
50~54 17万円 14906
55~59 16万円 14198
60以上 11万円 10500
無回答 15万円 4042
上記の介護サービス従事者の賃金状況を踏まえ、
「前述のような状況にあるにもかかわらず、厚生労働省においては、
①離職原因・未就業の原因の実態把握、どのような対策等が講じられれば就業するのかなどについての意識調査が未実施。
②介護サービス従事者の賃金の多面的・総合的な把握・分析が不十分及び
③介護サービス事業者の財務状況の分析が不十分。」
また、②の詳細については
「厚生労働省は、平成21年度に介護報酬の見直しを予定しており、給与、物価等の経済動向や地域間の給与格差等を勘案しつつ、介護サービス事業者の事業収入や介護サービス従事者の給与等の水準を含め介護サービス事業者の経営状態や介護サービス従事者の労働実態を把握すること等を通じて、国民の負担している保険料水準にも留意しながら、適切な水準の介護報酬を設定するとしている。
介護サービス従事者については、職種、年齢、勤続年数、性別及び保有資格の種類の区分による賃金の分析は行われているが、
① 例えば、職種・勤続年数ごと、職種・年齢ごと、勤続年数・男女ごと等複数の多面的・総合的な賃金分析は行われていない、
② 介護サービス事業以外の職種との多面的・総合的な比較は行われていない
ことから、介護サービス従事者を取り巻く環境の実態が明確に把握できるものとはなっていない。」
としています。
他にも、
「厚生労働省は、介護や福祉の分野の人材について、就業の有無、就業している場合の就業の現状、就業していない場合の理由や就業の意向について、平成20年度中に調査を実施する予定であるとしているが、その対象は、介護福祉士、社会福祉士及び精神保健福祉士であり、ホームヘルパーは対象としていない(注)。
(注) 現に就業しているホームヘルパーに対しては、財団法人介護労働安定センターが「平成19年度介護労働者の就業実態と就業意識調査」により意識調査を行っている。
このことについて、同省は、介護福祉士試験合格者の中にはホームヘルパーの資格を有している者も相当程度含まれていると考えられることから、当該調査によりホームヘルパーとしての意向等もある程度把握できるため、調査対象としていないとしている。
しかし、今後、前記の調査の結果等も踏まえつつ、ホームヘルパーを含む未就業の有資格者の就業を促進するための対策を講じていくことが重要である。」
との問題点を指摘しています。
(つづく)
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