先日ニュースで国会議員が自衛隊施設を使って農業訓練をという提案があったとニュースで見た。キャスターも「若者の中にも就農希望者が多い為」と言っていた。確かに新規就農希望者は結構いる。
有田でやっている”みかんの会”は生産者との取り組みの中で新規就農者を受け入れる事がある。新規就農を受け入れるにも裏付け(定期的な収入、社会保険などの保証)は必要で、産地の生産者は後継者育成のために新規就農者を入れたくてもこのあたりにネックがあったりするからだ。ここ数年でも片手ちょっとの新規就農者の世話をしたり、みかんの会に在籍させたりしているが、実際に今もって農業に従事している確立は20%程度ではないだろうか。
就農つまり”農業”は普通の就職とは違う部分が沢山ある。勿論、希望者の心構え一つなのかも知れないが、農業にはのんびりしたイメージや、自然と向き合うイメージがあるのでは無いだろうか。晴耕雨読的な生活をイメージして就農を希望する人間は沢山いる。
しかし、晴耕雨読はつまり収入も晴入雨無となるわけで、そこの理解が難しい。それに意外と農業はハードルが高い。特に農地取得に関しては中々大変である。
和歌山県でも新規就農者を受け入れようと色々な取り組みをしているが、農地取得となると突然トーンダウンする。特に有田地区(みかん)や南部地区(うめ)等は逆に新規お断り的な雰囲気すら漂う。なぜか・・・
良く考えてみたい。例えばめがね販売が有名な商店街があったとしよう。その商店街で大通りに面した一等地があったとする、そこに眼鏡屋さんを新規に始めるとしよう、通りから少し入った所で長く営業している眼鏡屋さんがあったらどういう反応をするだろうか・・・
更にその眼鏡屋さんが商店街の役員をされていて新規商店の認可に権利を持っていたら・・・
和歌山県でも過疎が急激に進む地区では喜んで受け入れてくれるのだが、ブランド産地はそうは行かない。よしんば土地があったとしても、条件の良い土地は地元の元気な生産者が手に入れて、新規就農者は不便な悪い土地があてがわれがちである。
競争原理だったら当然なのだろう。
産地での農業はある意味個人商店の集合体だ。ましてや人口が減少し食品が余っている日本ではどうやって収穫量を減らすかの方が大切かも知れない。だから、国や県が進めてくれた様に新規就農したのに、余り地方では歓迎されなかった・・・という経験をした人もいるのではないだろうか。
ところが、他府県に行くと比較的新規就農者が頑張っている地区も見受けられる。農業と一口に言ってしまえばそうなるのだが、農業だって色々あるわけで、野菜もあれば穀物も、畜産もある、寒い地方や施設園芸、大産地にブランド産地、それら全てが同じな訳が無く、その差を見比べる事は非常に重要だ。
それから新規就農者の中でも結構な割合で中高年や60歳定年組がいる事も事実である。「実家が農業で、父親がずっとやっている間は就職していたのだけれど、そろそろ親も引退しそうだし、私52歳だけれど企業での出世もなさそうだし、今なら早期退職割り増しがもらえるから、思い切って会社を辞めて農業を始めます」なんて人の多いこと。
そういう人は休日に実家の農業を手伝ったりしていた関係で案外技術がある。でも新規就農なのである。就農時点で大きな差があるのだ。農地も最初から手に入れているし、相続時も農地特例が使えるからハンデは無い。
これからしばらく不景気だと、上記の様な新規就農者は増えるのではないだろうか。
一介の若者が夢だけで入るにはちょっとリスクの大きい業界なのである。
ある場所で一度農業を始めると、引越しや転職(転地)なんて出来ないし・・・・
そんな背景の理解は実際に2~3年その地で農業をして見ないと実感できないかも知れない。だから定着率が低いのだ。
流行だからと進めるのも良いけれど、じっくりと研究する必要はあると思う。そして研究する材料の提供(情報の公開)は絶対に行政が行わなければならないとも思う。