父親的生活

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

おもちゃ屋の倒産から考察する

2008-04-15 20:26:00 | 出産・育児

非常に長いので、一部マニアの方のみ・・・・・

和歌山でお正月になると、大きな会場を借り切って、プラモデルやおもちゃを特売してくれていた会社が倒産(※正確には民事再生法の申請)をしたと連絡があった。負債総額40億円との事!

ローカル線の車両を使って広告をしたり、電車の中でおもちゃを売ったりと話題性もあり、ネット通販でもベストストアに選ばれるほどで、昨年は年商が20億円以上もあり、利益も億単位で出ていたらしい。去年お付き合いのある某大手監査法人の方からも”新進気鋭の注目会社がある”と聞かされていたが・・・・何故?

知り得る情報を集めてみたが・・・

この会社の社長、私よりも8歳若い(うわぁ、まだ20代だ!)。大手量販店のおもちゃ売り場担当から、事情があって独立、当時のノウハウと人脈を活かしてちょっと特徴のある商品構成で非常にマニア受けのする店をしていたと思う。

3年前は年商7億円程度、これが一気に20億円超なので、まさに急成長だ。

小売業は、基本的に現金を先に受け取れるので、資金回収が最も早い業界だ。それ故に資金繰りに困る事は少なく、むしろ楽である。多分、かつては店舗売上の構成が結構あり、キャッシュも豊富だったのだろう。3年前だと月6千万程度の売上だから、うち半分が店頭だとしても、通常営業でおそらく5千万円程度の資金余裕があったと思われる。これが同じ売上構成で増える分には問題ないと思うが、多分ネット売上も随分増えたと思う。ネット通販の決済はカード比率が明らかに高い。カード会社の入金は販売同時点ではなく遅れる。その分の資金停滞もあっただろう。

又、一昨年、大きな物流センターを開設した。ざっと見て建設費は2億くらいだろうか、敷地は市の開発公社所有地なので、おそらく買い取ったと思われる。大型トラックを3台購入したり、設備もそれなりに購入しただろうから、敷地込みで7億円程度の投資になったのではないだろうか、借入で賄った様なので、利息支払だけでも月150万円程度あっただろう。多分このあたりから規模が雪ダルマのように膨らみはじめる。

昨年は和歌山市内に大きな店舗を構えた。多分、キャッシュは若干楽になったかも知れないが、この費用もおそらく億だろう。そして在庫。倉庫の写真も見たが、在庫の山である。この業界は良く判らないけれど、以前ホームセンター等は在庫回転日数は半年と聞いていたので、在庫は10億以上あったと思われる。在庫は貸借対照表上は流動資産になるので、決算に影響は余り無い。

ここまでで予想される借入はもろもろ併せて25億くらいだろうか、そして買掛け(未だ代金を払っていない仕入れ)は、仮に2ヶ月分で考えると5億程度あるだろう。負債はざっと30億となる。負債40億だから、差額は判らないが、もしかしたら電車の改装費用やら、在庫やらがまだまだあったのかも知れない。

従業員が25人、人事コストが月1000万、昨年億単位の利益計上しているので、支払法人税は軽く5千万以上あるだろう。消費税の支払もある。4月は納税の季節なので、一気に現金が流出する。結果、足元の資金も行き詰まったと考えられる。

典型的な”黒字倒産”の例なのではないだろうか。(粉飾が無ければの話だけれど)

企業が大きくなるのは恐ろしい面もある。私は結局直接会う機会も無かったけれど、社長は県内のそれなりの規模の企業経営者の中では相当若い部類に入っただろう。悪いうわさも聞かなかったし、この単身独立の経営者は、一度会って話をしてみたいなぁと思っていた一人だった。

これから先は憶測の域を出ないが、おそらく急成長する企業経営者だし、ネット通販での実績(一応小売業になると思う)、売上規模、楽天等のブランド等から、銀行も、リース会社も沢山貸したのだろう。県のベンチャー育成担当者も相当持ち上げたと思われる。他方、量販店時代にお世話になった人脈を相当活用していたとも聞くので、売れ残り品等を安く仕入れていたのではと思われるフシもある(実際に特売はそんな商品が多かった)。なまじ販売力があるので、安いという理由で大量に購入したりもしたのではないだろうか。

そして引き金は簡単に引かれる。”売上減少”だ。小売業は資金繰りの関係から、売上減少によるダメージは大きい。ところがブームはすぐに去る。現金収入が減り、途端に資金が行き詰まる。後はお決まりのコース。

独立して、あれだけ派手に店をしていたら、大型量販店をはじめ、相当目の敵にされていただろう。頑張ったところで大型量販店には資金面でも、購買力でも勝てない。近隣を敵に回して商売をするのは苦労がつきものだ。きっと売れない商品も抱き合わせで随分買わされたのだろう。写真では、相当大きな倉庫なのに入りきらず、ブルーシートで野積されている在庫の写真もあった。

多分、目に見えない”孤独”と戦ったのではないだろうか。若くして独立。きっと経営ノウハウなんて誰も教えてくれないし、銀行頼りだったのだろう。社員教育どころでは無かったフシが、ネット通販の口コミ欄に見え隠れする。ところが商品はマニア受けして良く売れる、ネットストアーは大盛況。若い会社だから資金繰り、中長期戦略、お目付け役が居なかったのは想像に安い。

アリーナやテーマパークを使って派手に展開していたお正月の特売会も、今年は無かった様に思う。そういえば、私がこの会社のデータを始めて見た日付が2007年1.15となっている。去年の正月の特売会(テーマパークのアリーナをお正月3が日借り切ってだったと思う)に息子を連れて行って、その商品構成、売り場を見て”???”と違和感を感じたのがきっかけだった。売れる商品は少なく、特売品は型遅ればかり。売り場も中途半端で求める商品が少なかった。その時点では卸問屋と組んで、不良在庫を掃きだしているのかな?と思っていた。

それから1年3ヶ月、今回の結果である。

若い社長はどうなるのだろう。社屋も、トラックも、従業員も・・・

ネットで見つけた写真。閉鎖されたシャッターの向こうからは若い社長を中心に、活気のある会社の声が今でも聞こえてくる様だ。

残念な話である。

(※ひでとしさんのご指摘で一部加筆しています。)