「会場に移動しますからお友達と手をつないで先生について来てくださいね」
先生に促され子ども達はめいめいに立ち上がる。
訳がわからず怖くて泣いている子ども、
大人しく前の子に続く子ども、
おもちゃの前から離れない子ども・・・
彼は真剣な顔をして前の子に続く。
チラッとこっちの見たので「一人でえらいね」と声をかけてあげた
その声にパパを認めた彼は暫くパパのほうをじっと見て
目には見る見る涙が溢れ出す。
生真面目な息子は、
きっと昨夜からのパパとママの”頑張れるよね”のプレッシャーに耐えていたんだろう。
まだまだ小さな心は張り裂けんばかりに鳴り響き
それでもじっと頑張っていたんだろう。
パパの声を聞いた安心感で
それまで溜まっていた涙が堰を切ったように溢れ出し
とうとうママの手を握りに行った。
良く頑張っていたんだね
えらかったよ。今まで我慢できたんだもの。
少し大きめの
真新しい制服の上に大きな涙の雫がふたつ
綺麗に飾られた飾りのように
そして
5分もすると元気に階段を駆け上がる一成に戻り
少し不安そうにパパとママから離れて入園式は一人座って聞けたね。
多分、今日彼は
少しだけ親元を離れたのだろう。
そして、保護者席で妻と二人
離れて見る息子にこちらも少し。
こうして彼の世界は広がって行くのだろう
雨の日も晴れの日も
暑い夏も寒い冬も
色々なものを見て、聞いて、触って
彼の世界は無限に広がるのだろう
それを
妻と二人その分だけ離れた場所から
こうして見守って行くのだろう
おめでとう