夕焼け金魚 

不思議な話
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警備員当時の夢

2015-11-14 | 創作
金魚は大学時代にガードマンのアルバイトをしていました。
当時は現在と違って防犯よりも防火という面が強かった時代です。
当時は携帯電話とか無くてもっぱら車載無線が本部との通信手段でした。
巡回先では確認用のタイムカードがあって、それを押して確認していました。
警備の教習で一番強く言われたのが、巡回先の物は触るなです。
たとえ鼻紙一枚取ってはいけないと言われました。当たり前と事だと言えば当たり前のことなのですが、気が緩むというかツイと言うことがよくあったようです。
金魚は防火班ですからタバコ火の消し忘れを注意することが一番の仕事です。
ところが教習では、消し忘れのタバコは掃除するなと言われました。
「もし、うっかり消し忘れのタバコに触ったら報告するな」と言うのです。
タバコの消し忘れがあったと報告することは自分の成績というのもおかしいのですが、巡回の成果として報告したいのですが、タバコに触ったら報告するなと言うのです。
消し忘れがあったと報告すると必ず当人が注意されますが、例え証拠があっても本人は否定するそうです。
「誰かが俺をおとしめようとしている」と言う方までいるそうです。
「消し忘れを見つけたら、水でできるだけそのまま消すようにして時間をメモして貼っておけ」と言うのが指示でした。
そのようにしても「俺のじゃない」と言う人がいるそうです。
その時に防犯の注意も受けました。
「ほとんど、遭遇することはないだろうけど、もしクマに遭遇したら気付かないふりしてその場を離れ連絡しろ」と言うのが基本です。
間違っても「誰だ」と尋ねて近づくようなことは厳禁だと言われました。
クマとは、私が勤めていた会社の不審者の隠語です。
山で熊と遭遇しないようにするのと同じだというのです。
音を立てて自分の存在を教えて、相手が逃げるようにしろと言うのです。
「万が一、不審者が巡回先を荒らしたかのような感じがしたら車に戻って連絡しろ」と言う指示でした。その場で電話したりすると不審者がいて襲われたりするので、必ずその場から離れろと言われました。
その時の研修で、昼間、女の事務員がいるときに不審者が入ってきたらどうするという事例がありました。事務員を守るため不審者と戦うという回答が多かったのですが、正解は事務員を自分の背後に守って、その場から逃げるという事でした。
「戦って勝てるならそれでも良いですが、不審者と言えどもケガさせたりしたら後が面倒ですから、事務員を守って逃げてください」と言われました。
「テレビのように犯人を取り押さえたりすると、後で警察に引き渡すとき色々聞かれるし下手すると犯罪が行われていないのに暴行したとして自分が逮捕されることもあります」と言われたのには驚きました。
幸いなことに金魚は不審者と遭遇すると言うことはありませんでしたが、後から考えるとおかしいなと言うことは時々ありました。
金魚が巡回した先で今から考えるとおかしいなという事務所が何カ所かありました。
巡回に行くといつも残業している女の人がいるのです。
事務所でいつもひとりで机に向かっているのですが、ジロジロ見るわけにもいかないのでよくは見ていないのですが挨拶しても返事もしないし、何よりいつも残業しているというのがおかしいのです。
別に何をするわけでもないので、報告もしませんでしたがドアに鍵をかけることができなくて困るのです。もし鍵をかけ忘れされると自分の失敗になりますから。
それでいつも本部の方へ「残業者がいるので確認お願いします」といつも報告していたのですが、後ほど確認の者が来ると誰もいませんと言う報告しかなかったそうです。
最近、その時の様子を妙に思い出すのです。
暗い事務室にひとりでポツンと机に座っている事務員がいて、挨拶しても俯いたままの姿を思い出すのです。
電気も点いていないのになぜかその人だけ、ボッーと見えるのです。
最近、その時の様子を夢に見たのです。
暗い廊下を歩いて、事務室のドアを開けると中程にボーッと女の人が座っているのです。
「失礼します」と言って事務室を一巡してドアを閉めて帰るのです。
いつもはドアを閉めたらそのまま立ち去るのですが、なぜか夢の中で私は振り返ってもう一度ドアを開けたのです。
当時は一度もしなかったことです。
ドアを開けるとやっぱり暗い事務室で、先程の女の方はもういませんでした。
こんな事って思って事務室の中を見回るのですが、何処にもいないのです。
夢の中ですけど、余計怖い感じがしました。
何処に行ったのだろうと思いながら、ドアを開けて事務室のドアを開けたら、目の前に女の人が立っていました。
「どうして戻ったの」と真っ暗な中に赤い目が二つ、光っていて。





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