夕焼け金魚 

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お嫁さん怖い⑥ 巫女をお嫁さんにすると

2015-06-08 | 創作
友達から聞いた話です。
ある夜、友達が目を覚ますとベッドの横にお嫁さんがいなかったというのです。
トイレかなと思ったのですが、なかなか帰ってこなくて自分も目が冴えて、トイレに行ったのだそうです。
トイレは真っ暗で誰もいなくて、嫁は何処に行ったのかなと思って家の中を捜してみたのだそうです。
普段は使っていない仏間に灯りが見えたので、そっと覗いてみると仏間の中でお嫁さんが白い浴衣のような服を着て、なにやらブツブツ言っていたそうです。
何を言っているのだろうと聞き耳を立てると「掟、忘れた貴方は罰を受けないと、分かりますね」と言って写真に針を突き刺していたそうです。
まさかと思って写真をよく見ると、その時友達が付き合っていた不倫相手だったそうです。
どうして彼女が知っているのかと思うと同時に、何をしているのだろうと思って見ると、針を写真の手の処に突き刺しているのです。
「私の旦那様に手を出すなんて、いけない手ですね」と言って針を突き刺していたのです。
ビックリして嫁に気づかれないようにベッドに戻ると、布団を被って寝たのだですが、朝まで眠れなかったと言います。
朝、気付くと嫁が何事もなく朝食を作っていて、いつものように送ってくれたそうです。まさかと思ったのですけど、出勤すると一番に不倫相手に電話かけてみたのだそうです。「おはよう、元気」と軽めに声をかけたのですが「ごめんなさい、貴方とはもうお付き合い出来ない」と開口一番に言われたそうです。
突然の事で色々慰めてみたのですけど、いつもとは違って「どうしても別れる」と言うのだそうです。
あげくに「貴方があの方の旦那様だと、言わなかった貴方が悪いのよ」と言われて一方的に電話を切られたそうです。
「あの方の旦那だと言わない貴方が悪い」なんてどういう事か分からなかったと言います。
昨日の嫁の行為と関係があるとしか思えなくて、確かめてみたのだそうです。
夜の街で「つまんない話しだけど」と断って、嫁の話をしてみたのだそうです。
嫁の素性を軽く話して、誇張して嫁の悪口を言ってみたのだそうです。
「もしかして、貴方のお嫁さんって巫女さんしてませんでしたか」と聞く子がいたので「実家が神社だから、時々巫女さんの格好していたかも」と言った途端に、その場にいた女の子が全員顔色が変わったそうです。
「ごめんなさい、用事思い出して」とか「別のご氏名があるので失礼します」と次々と席から離れていってしまったそうです。
誰もいなくなった席に店長という男が来て「申し訳ございません。女の子をご用意出来ないのでお帰り頂けませんか」と丁寧に追い出されてしまったそうです。
店の片隅で女の子が友達を恐る恐る見つめていたそうです。
そんな事が一店だけでなく、何店も続いたので夜の街には出かけなくなったそうです。
「君って意外と顔なんだね」とお嫁さんに聞いてみたそうです。
「まさか、顔だなんて。でも女の世界では知っている方が多いかも」と言ってホッコリ笑うのです。
「良い笑顔なんですよね、その顔が」と惚気るのです。
「今では、あの夜見た嫁が、本当の出来事なのか、夢なのか分からない」と金魚に言うのです。
「はい、分からない方が良いと思います」と友達には聞こえないように呟いていました。
彼女が台所から、金魚を見ているのですから、本当の事なんて言えるはずがありません。

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