友達が訪ねてくる事が多くなっています。
昔を懐かしんでという感じの人もいれば、話す事が特殊で金魚でなければまともに聞いて貰えないと思われるような事を話しに来る人もいます。
学生時代にはそんなに仲がよいわけじゃないのに、どういうわけか町で会うと懐かしそうに近寄ってきて、話しかけてくるのです。
正直「誰、こいつ」と思う人もいますが懐かしげに話しかけられると無碍に断るわけにもいかないのです。
先日も、そんな人が会いに来ました。
新幹線が出来たから、私の事を思い出して会いに来てくれたのだそうです。
私の存在もこの街の活性化に役立っていると言ったところでしょうか。
「金魚なら、信じてくれると思うのだけど」と言われました。
「うちの奴、実はずっと仮面を付けていたのだよ」と言われたので所謂仮面夫婦の事だと思いました。
「この歳になってそんな事が分かるとショックだよね」と答えたのです。
熟年離婚の事だと思ったのです。リタイヤしたら濡れ落ち葉化して、連れ合いから邪険にされるのは辛い物です。
「ああ、この歳まであいつの素顔知らなかったのかと思うとショックで、金魚は素顔を見た方がよいと思うか」と言うのです。ちょっと熟年離婚とは違うのかなと思いました。
友達のお嫁さんとは結婚式の披露宴の時と仲間と一緒に一度だけ会った限りなのですが、目がクリクリして可愛い感じの人だと覚えています。
「目の大きい、可愛い人じゃないのか」と聞くと「そうじゃないみたいなのだよ」と言うのです。
「どうしてそんな風に思ったのだよ」
「実は出張の時に予定より早く帰って、あいつをビックリさせようとしたことがあるのだよ。家に帰るとシャワー室から水音がしていたからこっそり覗いてみたのだよ。シャワーを浴びているときに、突然に顔を出したらびっくりして危ないかも知れないと思ってこっそり覗いたのだよ」
「奥さんの裸、覗き見たかったのか」と少しエッチな気持ちを隠さずに聞くと「そんな歳の事じゃないよ、つい最近の事なんだから」と言うのです。
「シャワー室を覗くとあいつが湯船に浸かって、寝ていたのか目を瞑っていると思ってよく見ると目がなかったのだよ。目がないというか、口も鼻もなかったのだよ。白い、ぬべっとした顔がだけ、所謂のっぺらぼうなんだよ」
「のっぺらぼう、本当なのか。目が小さくて唇を塗って無かっただけなのでは」
「いや違う、何もなかった。のっぺらぼうだったんだよ」
「本当なのか」と私でも言ってしまいました。
「うん、間違いない。結婚した当時に嫁の田舎に行ったとき聞いた話思い出したんだよ」「どんな話だったんだよ」
「あの家の女の人は、代々、夜になると怖いって言われますから、夜は早めに寝る方がよいですよと、言われた事があるのだよ。新婚当時だから、夜が怖いなんて言われても卑猥な事しか思わなかったよ」
「だろうな、俺だったそう思ったから」
「そんな面白半分の事じゃなかったんだよ。今、考えると娘が出来たときも、産院じゃなくて自宅で出産したし、娘にすぐ会わして貰えなくて、一週間後にやっと逢わせて貰ったんだよ。今考えると、姑さんが言った『どんな顔が良いのだろうと娘と喧嘩して、すぐおみせ出来なかったのです』と言葉も聞き流しましたが本当の事だったのですよ。きっと娘も顔が無くて顔を描いていたのですよ、きっと」と言って涙ぐむのです。
そんな事を二人で飲みながら話しているときに、彼のお嫁さんが迎えに来たのです。
白髪の綺麗な髪の方で、相変わらずクリクリな目をしていましたけど、目がじっと私を見つめてと言うか、見ていて瞬きも目が動くという事もありませんでした。
動かない目でじっと私を見るのです。
意外と顔のない方、多くいるのかもしれません。
昔を懐かしんでという感じの人もいれば、話す事が特殊で金魚でなければまともに聞いて貰えないと思われるような事を話しに来る人もいます。
学生時代にはそんなに仲がよいわけじゃないのに、どういうわけか町で会うと懐かしそうに近寄ってきて、話しかけてくるのです。
正直「誰、こいつ」と思う人もいますが懐かしげに話しかけられると無碍に断るわけにもいかないのです。
先日も、そんな人が会いに来ました。
新幹線が出来たから、私の事を思い出して会いに来てくれたのだそうです。
私の存在もこの街の活性化に役立っていると言ったところでしょうか。
「金魚なら、信じてくれると思うのだけど」と言われました。
「うちの奴、実はずっと仮面を付けていたのだよ」と言われたので所謂仮面夫婦の事だと思いました。
「この歳になってそんな事が分かるとショックだよね」と答えたのです。
熟年離婚の事だと思ったのです。リタイヤしたら濡れ落ち葉化して、連れ合いから邪険にされるのは辛い物です。
「ああ、この歳まであいつの素顔知らなかったのかと思うとショックで、金魚は素顔を見た方がよいと思うか」と言うのです。ちょっと熟年離婚とは違うのかなと思いました。
友達のお嫁さんとは結婚式の披露宴の時と仲間と一緒に一度だけ会った限りなのですが、目がクリクリして可愛い感じの人だと覚えています。
「目の大きい、可愛い人じゃないのか」と聞くと「そうじゃないみたいなのだよ」と言うのです。
「どうしてそんな風に思ったのだよ」
「実は出張の時に予定より早く帰って、あいつをビックリさせようとしたことがあるのだよ。家に帰るとシャワー室から水音がしていたからこっそり覗いてみたのだよ。シャワーを浴びているときに、突然に顔を出したらびっくりして危ないかも知れないと思ってこっそり覗いたのだよ」
「奥さんの裸、覗き見たかったのか」と少しエッチな気持ちを隠さずに聞くと「そんな歳の事じゃないよ、つい最近の事なんだから」と言うのです。
「シャワー室を覗くとあいつが湯船に浸かって、寝ていたのか目を瞑っていると思ってよく見ると目がなかったのだよ。目がないというか、口も鼻もなかったのだよ。白い、ぬべっとした顔がだけ、所謂のっぺらぼうなんだよ」
「のっぺらぼう、本当なのか。目が小さくて唇を塗って無かっただけなのでは」
「いや違う、何もなかった。のっぺらぼうだったんだよ」
「本当なのか」と私でも言ってしまいました。
「うん、間違いない。結婚した当時に嫁の田舎に行ったとき聞いた話思い出したんだよ」「どんな話だったんだよ」
「あの家の女の人は、代々、夜になると怖いって言われますから、夜は早めに寝る方がよいですよと、言われた事があるのだよ。新婚当時だから、夜が怖いなんて言われても卑猥な事しか思わなかったよ」
「だろうな、俺だったそう思ったから」
「そんな面白半分の事じゃなかったんだよ。今、考えると娘が出来たときも、産院じゃなくて自宅で出産したし、娘にすぐ会わして貰えなくて、一週間後にやっと逢わせて貰ったんだよ。今考えると、姑さんが言った『どんな顔が良いのだろうと娘と喧嘩して、すぐおみせ出来なかったのです』と言葉も聞き流しましたが本当の事だったのですよ。きっと娘も顔が無くて顔を描いていたのですよ、きっと」と言って涙ぐむのです。
そんな事を二人で飲みながら話しているときに、彼のお嫁さんが迎えに来たのです。
白髪の綺麗な髪の方で、相変わらずクリクリな目をしていましたけど、目がじっと私を見つめてと言うか、見ていて瞬きも目が動くという事もありませんでした。
動かない目でじっと私を見るのです。
意外と顔のない方、多くいるのかもしれません。