九月の兼題は「星月夜」です。「星月夜」は三秋です。よく晴れて澄んだ秋の空は天の川を初め星が美しく眺められる。特に新月の頃は、満天の星が輝き星明かりだけで月夜のように明るい。その夜の趣を称えて「星月夜」それらの星々を「秋の星」という。例句として われの星燃えてをるなり星月夜 高浜虚子 星月夜はるか偲べば旅心 稲畑汀子 「星」は単体では季語にならず、必ず春・夏・秋・冬等が . . . 本文を読む
稲妻や利根の川筋幾うねり 徳田秋声 白山のそのしのゝめやほとゝぎす 泉鏡花 秋声・鏡花はともに金沢市出身で、小説・俳句ともに尾崎紅葉門下 にはいる。 秋声の稲妻の句は秋の初め暗い夜空に時折走る稲妻に幾度もうねり 流れる大河の全景が浮かぶ。 句柄が大きく堂々とした作と、田島和生氏は評する。 鏡花の句は白山と時鳥をあわせ鮮やかに詠み上げる。 いかにもすがすがしい佳作と田島氏 . . . 本文を読む
本日紹介する句は句集「蒼茫」(2010)所収。 新涼の顔してゐたる猫もまた 森澄雄 です。 体がほっと息つく涼しさ、みれば猫もまた味わっているようなの だ。 猫にも分かる涼しさは「新涼」なのである。 季語「涼し」は暑い夏にあえて見いだす涼しさ、 「新涼」は秋になって実感できる涼しさ。 軽舟氏は「新涼」と「涼し」の違いを知らしめる句であると評し ている。 「新涼」 . . . 本文を読む
本日紹介する句は句集「和音」(2010)所収。 深吉野や月光に鯉ひるがへり 上田日差子 上田日差子氏は上田五千石氏の子、この句の措辞の切れ味は 父親譲りと思わせる。 山中の清水を引いた池で飼い、客人が来たら饗するのだろう。 月光の差し通す水の厚みの中であおぐろい鯉がひるがえる。 幽玄の趣であると . . . 本文を読む
本日紹介する句は句集「花束」(2010)所収なみなみと大きく一つ芋の露 岩田由美岩田由美氏は平成最初の角川俳句賞を受賞。見た物が見たままの鮮度で俳句になった作品は印象的であった。この句もこんなに素直で良いのかと思いつつ深く納得する。平凡でもなく、陳腐でもない。星野立子細身綾子の俳句に通じる天真の世界だと、小川軽舟氏は評する。本当に深く納得する句です。いいですよね、こんな句。そこで一句。 正座して . . . 本文を読む
黎明俳壇で「蜻蛉」で俳句を求めています。お題は「とんぼ」(蜻蛉)ですが、お題にそった句でなくても結構ですので、ご自由に投稿くださいと言うことだそうです。葉書かメールでご応募ください。 送り先:〒460-0002 名古屋市中区丸の内3-6-27 EBSビル 黎明書房 黎明俳壇係 E-mail:mito-0310@reimei-shobo.com です。まぁ、蜻蛉で考えます。 . . . 本文を読む
句集「夏薊」2011年 秋天に漕ぎ出す櫂もなかりけり 岩岡中正(1948~)岩岡氏は政治思想史の研究家で長く熊本大学で教鞭をとった。掲句は高く澄み切った秋の空を見上げて爽快な句だ。「なかりけり」と否定されても読者は「漕ぎ出す櫂」をイメージせざるを得ない。それによって空が広く深い水に喩えられるのだと小川軽舟は評している。「薊」は「あざみ」と読みます。秋の空を海や水に喩える人は多いと思うが、この否 . . . 本文を読む
「鯊」読めましたか? ハゼです。秋から冬にかけて、海に下って産卵する。この頃が美味である。大きな頭に大きな目玉。なんとも愛嬌ものである。釣ってきたものをすぐに天麩羅にしたりする。例句とし、 活鯊に天麩羅油ぱちぱちと 長谷川櫂「蓬莱」 冬凪や橋の上から鯊釣つて 鈴木真砂女 居待月 ハゼですか、難しいですね。 夕金風に詠んでみますか。 そこで一句、 鯊が好きなんて言った覚え無し . . . 本文を読む
NHK俳句の「凩」です。 屋根毎に木枯らし吹いて城下町 凩やいらかの波を楽しんで 道なりに走る凩長土塀 城下町の上を行く凩の景です。 ちなみに「いらかのなみ」って瓦屋根の波のこと。 鯉のぼりの童謡で使われていた言葉。 「長土塀」は武家屋敷の土壁が長く続いていることで、金沢では町 名にもなっています。 凩にゾウ鳴き電車走り来る 田圃の中を象が鳴くような警笛を鳴らして走る電車の景です。 「ゾウ鳴き電 . . . 本文を読む
今度の兼題は「凩」です。「凩」は晩秋から初冬に吹く北西からの季節風。冷たく乾いた風であることから、木枯と呼ばれる。木枯らしが吹くといよいよ冬本番です。例句として、 妻へ帰るまで木枯の四面楚歌 鷹羽行行 金魚も晩秋から冬に入りかけていますから、心境をそのまま詠むことに。 凩や懐かしいものなにもかも 凩や箪笥も下駄も同じ桐 凩や園児二列で手を繋ぐ 寒いねに凩ですか笑う顔 凩や最後の一枚動 . . . 本文を読む