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水を描く @山種美術館

2018年08月21日 | アート

山種美術館で開催中の「水を描く」展(~9月6日まで)のギャラリートークに参加してきました。春に開催された「桜 さくら SAKURA 2018」展は ”美術館でお花見!” がテーマでしたが、今回は ”美術館で納涼!” がテーマです。

折しも今年は西日本で大きな水の災害がありましたが、一方で日本を取巻く豊かな水資源は、これまで美術の世界においても、芸術家たちにさまざまなインスピレーションを与えてきました。今年の夏は例年にない暑さでしたが、しばし酷暑を忘れて、涼の世界を堪能しました。

東山魁夷 「緑潤う」 1976年

親交のあった川端康成から、”今のうちに京都を描いて残しておいてください”と請われて手掛けた連作「京洛四季」の一作です。どこかで見た風景と思ったら、今年5月に訪れた修学院離宮の浴龍池でした。

これはその時撮った写真を同じ構図で切り取ったものですが、魁夷は見たままではなく、色も形も再構築しているのがわかります。”東山ブルー”とよばれる、青みがかった独特の色彩が、夢の中のような幻想的な世界を作り出していました。

宮廻正明 「水花火(螺)」 2012年

投網漁の網を花火に見立てた大胆な構図の作品。地は、薄い美濃紙を重ねて裏彩色という技法が取り入れられていて、表に絹が貼り込まれています。近くで見ると、凸凹した表面に青の点描と網目が細かく描きこまれていて、その繊細さに見入ってしまいました。デザイン性があってとても好きな作品です。

竹内栖鳳(たけうち・せいほう) 「緑池」 1927年

池からひょっこりカエルが顔を出している、なんとも愛らしい作品。水の透明感がみごとに表現されています。

小野竹喬(おの・ちっきょう) 「沖の灯」 1977年

ギャラリートークではスルーでしたが、私はこの作品とても好きです。たぶん幾何学的でシンプルな作品に弱いんだな...^^; 日暮れのピンク色に染まった雲、遠くにちらちらと光る漁火、詩情を感じる作品です。

川端龍子(かわばた・りゅうし) 「鳴門」 1929年

この作品は撮影することができました。開館に合わせてでかけたので、誰もいないうちにパチリ。目の覚めるような鮮やかな青色に圧倒されました。貴重な群青の絵具を3.6kgも使っているそうです。

迫力あふれる作品ですが、龍子は鳴門に行ったことがないそうです。この絵も最初は小田原の江ノ浦を描いていたのを、龍子が立ち上げた”青龍社”の第一回展に出展するために、途中から鳴門に描きかえたのだそうです。

奥村土牛 「鳴門」 1959年

こちらの鳴門は、以前「古径と土牛」展で見ました。山種美術館を代表する所蔵作品のひとつです。土牛は龍子と違い、実際に鳴門に足を運んで、揺れる船の上で、夫人に帯をつかんでもらいながら何十枚もスケッチしたそうです。写真だとうまく伝えられませんが、淡い緑色がとてもきれいです。

千住博 「ウォーターフォール」 1995年

滝の轟音が聞こえてきそうな清涼感あふれる作品。この絵は実際にキャンパスを立てて、上から絵の具を流して描かれているそうです。5色の滝を並べた「フォーリングカラーズ」という作品も、ウォーホルみたいな趣向で楽しかったです。

ゆっくり水のアートを鑑賞したあとは、いつものように1階の"Cafe椿"でひと休み。企画展にちなんだ和菓子をいただきました。5種類の中から私が選んだのは、小茂田青樹の「春雨」をモチーフにした”花の雫”というお菓子。雨に濡れた海棠の花が表現されています。


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6 コメント

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Unknown (Bianca)
2018-08-22 00:29:30
セレンディピティ様
こちらにはご無沙汰しています。
山種美術館は以前から何となく好きでしたが、この展示会はまたいまの季節にピッタリですね。
投網の絵は最近の作なんですか。一見して、素敵だなと思いました。このデザインは悠久の感じがしますよね。
この美術館では抹茶とお菓子が味わえるんですね。何時か行ってみよう。(水)じつは私も、昨日、松江城の向かいの茶店で抹茶を飲んで来た来たばかり。あまりに蒸し暑かったので。
おはようございます! (マリンカ)
2018-08-22 09:35:34
美術館で納涼!ということで、お水に関する作品ばかりが集まっているなんて着眼点が素敵な展示会ですね~💞
東山魁夷さん好きなんですが、そちらの作品初めて拝見しました。
セレンさんの撮られた修学院離宮の浴龍池お写真と比べてみると実物よりも幻想的な世界になっていますね😄

川端龍子さん、想像だけでこんなに大迫力の鳴門が描けるなんて…なんて素晴らしいんでしょう!
行ったことはないと言われなければ、その場で描かれたんだろうと錯覚する位見事な渦潮ですね✨

素敵な展示会にお茶に、心洗われるひと時ですね~😻
☆ Biancaさま ☆ (セレンディピティ)
2018-08-22 09:35:50
Biancaさん、こんにちは。
山種美術館、プライベートな雰囲気が落ち着いて、私も大好きな美術館です。
近代日本画が中心ですが、私の好みの作品が多いです。
10年ほど前に、今の広尾(最寄り駅は恵比寿)に移転してきたんですよ。

今の季節にぴったりの清涼感あふれる展覧会でした。
投網の絵、私も気に入りました。デザイン性のある構図もすばらしいし
近くで見ると、張り子のような風合いで、独特のテクスチャがまたすばらしかったです。

毎回、企画展にあわせたお菓子とお抹茶がいただけるのも楽しみです。
こちらにいらっしゃる際には是非☆
☆ マリンカさま ☆ (セレンディピティ)
2018-08-22 10:26:20
マリンカさん、こんにちは。
水をテーマにした展覧会、清涼感たっぷりで、しばし酷暑を忘れました。^^
東山魁夷さんの作品、静かで端正な佇まいがすてきですね。
風景画といっても、見たままでなく
新たな世界を作り出していることがわかって感動しました。
青の美しさに引き込まれました。

鳴門を描いた作品が今回3点ありましたが、マリンカさんを思い出しました。^^
やはり自然の神秘があって、芸術家たちの創造力を掻きたてる題材なのでしょうね。
川端龍子さん、見ないでこんなに迫力のあるうずしおを描かれるとは
豊かな想像力にびっくりしました。@@
涼しげ (ノルウェーまだ~む)
2018-08-22 15:53:04
セレンさん☆
水の絵と言うものは観ているだけでも涼やかな気持ちになれますね~
今日も暑さが戻ってきたので、ありがたいです。
それにしても実際に観たアングルで絵画が描かれているって素敵ですね!よく思い出されました~
☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ (セレンディピティ)
2018-08-22 17:04:12
まだ~むさん、こんにちは。
滝や鳴門など、不思議なもので、見ているだけで涼しくなりますね~
暑い日にぴったりの企画展でした。
絵を見た時に、あれ?もしかして?と思ったので
ギャラリートークで実際にお話がうかがえてよかったです。^^

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