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ドリーム

2017年10月04日 | 映画

米ソが熾烈な宇宙開発競争を繰り広げていた1960年代に、アメリカ初の有人宇宙飛行計画を支えた、3人の黒人女性技術者たちの奮闘を描いた事実に基づくドラマ。監督は「ヴィンセントが教えてくれたこと」のセオドア・メルフィ。

ドリーム (Hidden Figures)

1961年、ヴァージニア州ハンプトン。NASAのラングレー研究所に、3人の黒人女性技術者たちが配属されます。ずば抜けた数学の才能をもつキャサリン(タラジ・P・ヘンソン)は有人飛行計画に携わる計算手として。ドロシー(オクタビア・スペンサー)は計算部を束ねる管理職代理として。メアリー(ジャネール・モネイ)はハードウェアのエンジニアとして。

しかし非白人への分離政策が行われていたこの時代、彼女たちは能力に見合った責任ある仕事や、正当な役職、技術を学ぶ機会を与えられず、白人男性の仕事を陰で支える存在として、理不尽な立場に追いやられていました。それでもめげずに仕事で結果を出していくうちに、彼女たちの実力が認められるようになり...。

今だから打ち明けると、ゴーストバスターズ(2016)にはちょっとがっかりでした。だって女性科学者たちがちっともかっこよくなかったんだもの...。だから本作の公開をとっても楽しみにしていました。そう、私はこういう映画が見たかった♪ しかもこれが実話だというのですから、なおのこと痛快で、うれしくなりました。

女性で非白人という2つの垣根を乗り越える彼女たちですが、映画は悲壮感がなく、明るく前向きに、時にユーモアを交えて描かれているところがよかった。私の大好きな「ヘルプ」や「ラビング」のテイストに似ています。彼女たちがしなやかに困難に立ち向かう姿が清々しく、さわやかな感動を覚えました。

NASAのラングレー研究所は、以前住んでいたヴァージニアの家のすぐ近くですし、フロリダのケープ・カナヴェラルも旅行で行ったことのある懐かしい場所。そして私自身、電卓が信じられずに自分で検算するような変な子供だったし、プログラミングに携わり、アメリカの大学で夜間クラスに通っていたこともあるし...

いっしょに語るのはあまりにおこがましいですが、時代背景は違うものの、同じ非白人の女性として共感できるところがたくさんありました。「成功しそうになると壁ができる」「誰もがが”最初の人”になれる」など数々のセリフも印象的。差別を声高に叫ぶのではなく、結果を出すことで実力を証明し、論理的に説得して道を切り開いていく姿がまぶしかったです。

数学自体が文化などのバイアスを受けにくい、万人に公正な学問ということも大きかったのでしょうね。そして肌の色や性別という色眼鏡なしにキャサリンを正当に評価する上司(ケヴィン・コスナー)や、宇宙飛行士のジョン・グレン(グレン・パウエル)のなんてかっこいいこと。こういう影響力のある人が先頭に立つことで周囲の反応も変わってきます。

クラシックでカラフルな、ワーキングウーマンのファッションもすてきだったし、「ムーンライト」のマハーシャラ・アリとジャネール・モネイが出ていたのもうれしかった。Wikipediaによると、事実と時間軸が異なる部分もあるようですが、それを超えて心に響く作品でした。


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8 コメント

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前向きがGOOD (ノルウェーまだ~む)
2017-10-10 10:34:25
セレンさん☆
まさに仰る通りですね~!
女性である黒人であるという2重の差別を受けながらも、毅然としていて、悲壮感なく前向きなところが本当に気持ちの良い作品でした。
それにしてもセレンさんはアメリカの大学の夜間にまで通っていらしたのですね!?
実に知性と実力を兼ね備えていらっしゃるところが、主人公たちの凛とした姿に重なりますっ☆
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☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ (セレンディピティ)
2017-10-10 15:57:57
まだ~むさん、こんにちは。
実際にはもっといろいろ苦労があったのでしょうが
めげずに明るく、軽やかに乗り越えていく女性たちがすてきででしたね。
ただ主張するだけでなく、実力で証明していく姿がかっこよかったです。

勉強がしたくて、夫に息子を見てもらって通っていましたが
半分趣味のようなものなのですよ。でもいい経験でした。
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月を目指して! (ごみつ)
2017-10-18 21:59:53
こんばんは!

私も先日、やっと見に行ってきました。

作品全体が明るくて、前向きなストーリー展開でつくられたとても気持ちの良い作品でしたね。

彼女達は、一般人とはかけはなれた才能を持っていたからこそでしょうが、それにしてもこれだけ才能があってもあれだけの差別を受けていたのは本当に驚きですよね。

「ライト・スタッフ」はご覧になりましたか?あわせて見ると感動もひとしおだと思いますよ!
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☆ ごみつさま ☆ (セレンディピティ)
2017-10-19 08:41:50
ごみつさん、おはようございます。
ドリーム、ほんとうに気持ちのよいいい作品でしたね。

非白人、そして女性への問答無用の差別が
彼女たちのような才能や努力に対する目を曇らせてしまっていたのでしょうね。
今も完全には差別がなくなっているわけではありませんが
こういう作品を見ると、勇気を与えられます。

「ライト・スタッフ」は他の方のレビューで知りました。
近いうちに見てみたいと思っています♪
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こんばんは〜 (margot2005)
2017-11-07 22:27:25
>さわやかな感動を覚えました...
同感です。素晴らしい映画でした。

ちょっと上の書き込みで気になったのですが、「ライト・スタッフ」はハリウッド映画史に残る秀作の中でもダントツではないでしょうか?NASAを舞台に描かれたとても興味深い映画で何度も見ています。是非ご覧になって下さい。
本作を見て私も「ライト・スタッフ」を思いだしました。

本作に戻って...
キャサリンたち三人の女性はタフだし、めげないしでスゴい女性だったと思います。
60年代のファッション素敵でした。

ケヴィン良かったです。キルステンもね。

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☆ margot2005さま ☆ (セレンディピティ)
2017-11-07 22:55:51
margotさん、こんばんは。
早速のコメント、ありがとうございます。

「ライト・スタッフ」先日遅ればせながら見ました。
「ドリーム」と併せてみると、感動もひとしおですね。
最初にまず音速への挑戦があり
宇宙飛行士を選考するためのユニークな試験があり...
彼らを支える家族の姿も描かれていて、興味深かったです。
そしてこの作品でもジョン・グレンは男前でしたね!

本作で、「ライト・スタッフ」では描かれなかった
キャサリンたちの活躍を知ることができてよかったです♪
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Unknown (onscreen)
2017-12-28 00:40:05
映画をぐっと盛りたてた音楽にも注目してみました。

「ライトスタッフ」同様!
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☆ onscreenさま ☆ (セレンディピティ)
2017-12-28 09:23:52
onscreenさん、おはようございます。
記事には書きそびれましたが
この作品、音楽もよかったですよね。
いかにも60年代といった感じの音楽だったので
あとでファレルが映画のために書き下ろした
と知った時には感激しました。

「ライトスタッフ」はクラシック音楽が効果的に使われていて
こちらもすてきでしたね♪
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