高田郁作「出世花」を読みました。この本で初めて「三味聖(さんまいひじり)」というのを知りました。以前に本木雅弘さん主演の「おくりびと」を見た時に「納棺師」というのを初めて知りました。身近な人も見送っていますが、このような場面を見たことがありません。三味聖の仕事はいろいろありますが、その一つが死者を湯灌しその後ご遺体を棺に納めます。主人公艶は武士の家に生まれました。事情があり三味聖になりました。「艶」という名を青泉寺の住職から「縁」という名に変えてもらい、「正縁」となり、ひたむきに三味聖の仕事に向き合いました。武士も庶民も女郎も生きていたときの苦労を思って、成仏を心から祈って丁寧に湯灌します。湯灌するには決まり事が沢山あり、本を読んだり、教えてもらったりして学ばなければなりません。そうして学んだ知識が殺人事件の解決につながりました。お墓に供える「樒ーしきみ」には毒があります。お墓のそばに樒を植えるとその匂いで野犬から守られたり、その実は猛毒で野犬が口にすれば死に至るそうです。薬草「大茴香ーだいういきょう」と似ていることから「樒」の実を使ってお金儲けをしていたものがいました。正縁は女性なのでちょっとヒヤヒヤする場面もありました。感動で泣ける場面も沢山ありました。高田郁さんの小説には心根の優しい女性や1本筋の通った思慮深い尊敬できるような登場人物で、読後が本当に清々しい気持ちになります。
2022-5-24(火) 図書館資料 請求番号:913/B/タカ