10時と3時のいっぷく

零細建築設計事務所の日常とその周辺を、コーヒータイムに綴ります。

200年住宅の嘆き節

2009年03月05日 | 研修・自己啓発
「200年住宅構想で何が変わるのか? 知らねば負け組! 工務店・ビルダ-の生き残り戦略」というテーマのセミナーに出席しました。建築CADソフトのベンダーが主催したものです。当事務所はビルダ-ではありませんが、もう一つ「今、施主が振り向く提案方法」というテーマのセミナーが引き続きあったので、この二つを申込みしました。

200年住宅については、福田前首相が口にしていたので、お聞きになった方もおられると思います。正式には“長期優良住宅”と言って「長期優良住宅普及促進法」という法律が昨年12月に成立し今年6月4日からスタートします。内容は特にびっくりするような材料を使うというような事でなく、例えば、(1)構造躯体の耐久性 (2)耐震性 (3)内装・設備の維持管理の容易性 (4)変化に対応できる良質な居住空間 等となっています。これらは、通常設計において当然心掛けていることです。もう一点の特徴は、定期点検の計画が策定されていること、というのがあります。これに伴い住宅履歴情報を整備する必要が出て来ます。これまでの我が国の住宅行政は量を供給することに主眼が置かれていました。“スクラップ&ビルド”の消費社会の典型です。ところがここに来て、小子化や環境問題が言われ、“ストック”型の社会にしなければ、ということで、方針が変わってきたのです。法律でわざわざこんなことをしなくても、私なんかは元々そういう考えで仕事をしてきましたので、どこか変な感じがします。講師は建築行政に明るい弁護士の方だったのですが、これも住宅メーカーのビジネスチャンスを助ける法律かな、と言っていました。

二つ目の「今、施主が振り向く提案方法」は、主催のソフトの宣伝で、このソフトを使っていない私にはあまり関係ない内容でした。このソフトは「建築専用CAD」で、建築に特化したCADで価格も高価です。私は「汎用CAD」と言って、建築のみならず、図形の作成全般が出来るソフトを使っていて、安価なものです。専用CADですと、“伏図”と言って、梁の架構設計など、自動で出来るという説明でしたが、これは感心できません。伏図は、やはり設計者が架構を考えながら行なうべきもので、そういうことを“設計”と言うのです。コンピューターがいくら正確に早く結果を出したとしても、それは“設計”とは言えません。一つ一つ柱を決め、梁を決めて行く手順が、手間が掛かっても結果的には“長期優良住宅”になるものと思います。それは設計者自身にも設計した意味を与えるものと思います。法律でこういうことまでしなければならないほど、我が国の住文化は失墜してしまったということでしょう。

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