10時と3時のいっぷく

零細建築設計事務所の日常とその周辺を、コーヒータイムに綴ります。

さよなら青焼機

2010年05月26日 | 未分類
私がこの仕事に入った頃の設計図というのは、トレーシングペーパー(半透明の紙)に鉛筆で描いていました。それを複写(今で言えばコピーですが)するには、感光紙に重ねて、複写機(俗に言う青焼機)を通し、発色させるものでした。その頃はいわゆる“湿式”で、現像液にアンモニアを使っていたと思います。ある時、アンモニアの容器をひっくり返して大変な目にあったことを憶えています。その後“乾式”になったのですが、図面としては、いわゆる“青図”で通ってきました。

ところが最近はPPC方式のいわゆる白焼きが主流になってきて、青焼機の需要は減る一方、新しい機種の生産もなく、消えて行くのを待つのみとなりました。そんな訳ですから、故障した場合も修理可能な範囲なら良いのですが、複雑な場合はお手上げです。15年前に購入したこの青焼機も、とうとう年貢の納め時となり、購入した販売店に処分をお願いしました。機械とは言え、永年使ってきたモノには愛着があります。引揚げに来た販売店の社員に、『将来博物館行きになるかも知れないから、取っておいたら』と言ったら、あっさりと手を横に振られてしまいました。

事務機器に限らず、工業化製品の進歩(?)は目まぐるしいものがあります。製図版に三角定規といった設計作業の風景は消え、パソコンの画面に向かう姿になりました。設計のためのソフトウェアも常にバージョンを上げて(どこまで上げるんでしょうね)、そのバージョンアップを怠っていたため、パソコン本体のOSとのバージョンが合わなくなり、とうとう、新しいものを買わなければなりません。供給側の経済論理からすれば当然なのでしょうが、何か納得できない世の中になってしまいました。