10時と3時のいっぷく

零細建築設計事務所の日常とその周辺を、コーヒータイムに綴ります。

装置化する住まい

2006年06月01日 | 建築の話題
消防法の改正により、この6月1日から新築住宅にも火災警報器の設置が義務付けられます。数年前、シックハウス対策の一環として、24時間作動する換気扇の設置が義務付けられましたが、これらの流れを考えると、住宅がだんだんと重装備されて行くことに気がつきます。私の個人的な感想は、なんで法律がこんなお節介をするのか、ということです。穿った見方をすると、換気扇メーカーや警報器メーカーの業界から政治献金でも貰った結果なのかなんて考えてしまいます。確かに安全性という意味は分かりますが、換気扇を廻していればアトピーが治る訳ではなく、警報器を付けたからといって火災から守れるというものではありません。肝心なのはそれ以前のこと─つまり家はどうあるべきかとか、どのように暮らすかべきかといったこと─だと思います。このまま行けば、ますます日本の家は装置化が進み、機械でコントロールされる生活になって行く恐れを感じます。法律が日本の住文化のさまたげをするようなことは感心できません。

2005/10大ニュース

2005年12月30日 | 建築の話題
毎年この時期になると、私の10大ニュースを書いています。必ずしも10項目ではありませんが、プライベートな部分を除いて発表しましょう。
(1)ブログ始める
 今年の1月から私もブログを始めました。最初は今のgooではなく、小さな(たぶん)会社のを利用していたのですが、8月に突然ホストコンピューターのトラブルがあって、更新出来なくなりました。この会社のを選んだのは、広告がないの1点の理由だけでしたが、あまりにもトラブルが長期に続いたので(今でもだめです。もしかしたらこの会社倒産したかも)現在のgooに切り替えました。誰かさんみたいに毎日は書込みできませんが、ぼちぼち続けます。

(2)携帯電話始める
 驚かれるかも知れませんが、昨年まで携帯電話を持っていませんでした。持たない主義という訳ではないのですが、持つ必要もなかったのです。ところが、2月に必要な事情が生じて持つ羽目に。あればあるで便利なことも多いのですが、強がりではありませんが、なくても生活は出来ます。余談ですが、着信音はいわゆる着メロ(音楽)でなく、鳥のさえずりと川のせせらぎです。あの着メロというのはどうも馴染めません。

(3)ワイズメンズクラブの役員を無事務める
昨年の7月からワイズメンズクラブ国際協会東日本区の事業主任(企業で言えば本社の営業部長)という役目を任命され、今年6月まで東奔西走の日々を送りました。6月には甲府で区大会があり、受け入れるクラブの一員として準備にも大忙しでした。この役目を通じて全国の仲間と交流出来たことは、大きな収穫でした。

(4)ネットを通じて仕事が広がる
 ここ数年の傾向ではありますが、インターネット(HP)からの仕事の依頼が徐々に増えています。今年もSさんのリフォーム、OHさん(葡萄の丘の洋館)からの依頼(実施設計は来年)などがありました。また、HPは全然知らない人からの依頼もありますが、当事務所をより深く知って頂くための補助的な役目も多分にあります。そういう意味では今工事中のOさんの家もそれにあてはまります。

(5)ネットを通じて世界が広がる
 インターネットはもちろん仕事ばかりに限ったことではありません。私が参加しているML(メイリングリスト)を通じて、来年「まちかどの近代建築写真展」を甲府で開催することになり、その準備に入りました。新しい出会い、交流が始まっています。この経過の中で“甲府カトリック教会”という隠れた文化財を発掘できたことは大きな喜びでした。

といったところですが、最後に文字通り唖然とした世の中の3大『ア』事件も私のような建築設計事務所には大いに影響がありました。3ア-すなわち、アスベスト問題、悪質リフォーム事件、アネハ元建築士による一連の耐震強度偽装事件です。今年は建築界も大いに揺れた一年でした。
ただ個人的には、家族健康で新しい年を迎えられることに感謝したいと思います。
皆様どうぞ良いお年を。

『一建築家の信條』

2005年11月27日 | 建築の話題
このところ巷間を賑わしている建築界の不祥事、会う人毎にこの話題になります。構造計算書を偽造した設計者、建設会社からの圧力、他に何があったのか分かりませんが、とにかく何とも言えないやるせなさを感じます。23年前に事務所を始めた時、3つのしないことを心に決めました。
1.公共工事の設計はしない。
2.ゼネコンの下請はしない。
3.設計の営業活動はしない。
というものです。公共工事の設計者の選定は今では随分改善されましたが、当時私が知る範囲では、「設計料の入札」をするか、仲間同士で仕事を割り振っていたのがほとんどでした。これら3つの事を格好良くまとめれば、「自由と独立」という言葉に象徴されるでしょう。私の事務所のサイトのプロフィールの欄にも経営信条として書いてあります。われわれ建築士はいかなる組織・団体・個人等から制約も拘束も受けないし、ましてやいかなる圧力にも屈しないというものです。
私がこのような考えになったのは、一人の建築家の生きざまに影響を受けたからです。その人は日本の近代建築をリードして来た前川國男。ここでは詳しく書けませんが、私が独立する直前に出版された『一建築家の信條』という本をたまたま読んだことにもその一因はあります。前川へのインタビューと彼の文集で構成された本です。

ところで、23年経った今も、“三箇条”を守っているかどうか、ですが、相変わらず進歩のない人間のようで、ほぼ守っている(守るというような意識はしていないのですが)といっても良いでしょう。
ただ、最近ウェブサイトからの仕事が増えているのですが、これは“営業活動”には該当しないことを宣言しておきます。

とんでもないやつ!

2005年11月18日 | 建築の話題
まったくとんでもないやつが現われたものです。こともあろうに構造計算書を偽造するとは。一級建築士の社会的信頼を姉歯某とかいう男が一気に崩してしまいました。こういう事がとうとう建築設計の分野にまで及んできたことに大いなるショックを受けています。こういうことが起こると、当局の規制も厳しくなり、また新たな法律が出てきそうな感じがします。私もこの仕事を永年していますが、過去、行政改革だの規制緩和だのと騒いでも、業務内容が簡素になったことはありません。むしろ、様々な新しい法律が出来て、手続きが複雑になる一方です。今回の事件の一方の当事者である、民間検査機関も過去にはなく、規制緩和の関連で新しく出来た仕組みなのです。民間になったから、今回のようなことが起こったとは単純には言い切れませんが、“甘さ”があったことも否めません。

以前、我が家の南隣りの家で3階を増築したのですが、それが明らかに違反建築でした。それを役所に言ったのですが、一向に埒があかず、結局は泣き寝入りということでした。私が一番悔しかったのは、普段建築の法律を遵守して、施主さんにもそのように指導している立場の人間の目の前で、平気で違反建築を認めている、ということです。こういう体質の人間たちがいる限り、今回のような事件はまた繰り返されるでしょう。

甲府カトリック教会余話

2005年09月30日 | 建築の話題
歴史的な建造物の保存というのは、特に取り壊しの危機に瀕している場合は難しい点が多いと思います。今回「甲府カトリック教会」の情報を提供してくれた知人のIさんからも、山梨の宝として保存できる道を示して欲しい旨のメイルを頂きました。私もまったく同感で、何とかできないものか色々と考えてみました。
このようなケースの場合、幾つかのアプローチがあると思います。
まず、第一にこの建物が歴史的、学術的、文化的にみてどの程度の価値があるか、客観的に判断する必要があります。私個人の嗜好ではなく、しかるべき機関で判定をしてもらうということです。それでさっそく、市の文化・芸術課に電話をして事情を説明しました。電話に出た担当の方も非常に好意的で、一度現地を見させて欲しいとのことでした。
もうひとつのアプローチは、建築関係団体からの働きかけでしょう。建築学会や建築士会といった職能団体でも所有者に保存の要望書を出すケースがありますが、ただ今回の場合、すんなりそう行くとは限りません。
最後の方法として、これが一番効果的だと思うのですが、“草の根保存運動”を展開する、ということです。行政や専門家ではなく、一般市民がこの建物に愛着を持ち、その価値を認めれば、所有者の心も動くかも知れません。その手法はいろいろ考えられますが、マスコミを利用するのも一つの方法です。Iさんのメイルへの答えになったでしょうか。
余談ですが昨日教会の事務所で、ロッカーの上に十字架が刻まれた鬼瓦があるのを発見しました。以前の教会に使われていたもののようです。地震で落ちて割れないように、大切に保管して頂きたいものです。

続・松林軒ビル

2005年09月21日 | 建築の話題
松林軒ビルの解体の説明会が隣の駐車場であったので行って来ました。地元町内会の人たちや報道関係者などが集まり、所有者と解体工事業者の説明を聞きました。10月から解体工事に取りかかるとのことでしたが、私は解体が始まるまでの間、内部を見学できるかどうかだけに関心があったので、その事を訪ねると、とても見れる状態ではないとのこと。中は、その後テナントが入れ替わり立ち代わりしたので、当初の百貨店の面影はないとのことでした。跡地は10階建てのビジネスホテルとして生まれ変わるそうです。

松林軒ビル

2005年09月17日 | 建築の話題
甲府空襲の“証人”でもあり、この規模の商業ビルとしては県内最古の建物でもある旧松林軒ビル(現甲府会館)が、とうとう解体されることになりました。1937年県内最初のデパートとして誕生以来、いくつかの変遷を経てきましたが、数年前からは空きビルになり、老朽化が激しく、昨年は外壁が落下してタクシーのフロントガラスを直撃する事故が発生しました。甲府の中心商店街を象徴する建物であっただけに残念です。
写真は甲府空襲で廃虚と化した甲府市中心部で焼け残った松林軒ビルです。

再スタート

2005年08月24日 | 建築の話題
ついこの間まで使っていた、「Sweet Box」というブログが一週間以上も前から、
「現在、ハードウェアトラブルにより、SweetBox関連の全サービスにアクセス出来ない状態になっております。復旧作業を行っておりますが、復旧までには今しばらく時間を要する見通しです。ご利用の皆様にはご迷惑をおかけしておりますことをお詫び申し上げます」とのメッセージのまま更新も何もできなくなってしまった。

そんなわけで、今日からこの“goo”に乗換えました。