10時と3時のいっぷく

零細建築設計事務所の日常とその周辺を、コーヒータイムに綴ります。

師匠との別れ

2008年08月19日 | 未分類
小生の修行時代5年間程、お世話になった工務店の社長(現会長)がお亡くなりになり、葬儀に参列してきました。今から30数年も前ですが、東京豊島区の工務店で(今では考えられないと思いますが)「住み込み」で“修行”をしました。それはまさしく、修行と言うに相応しい生活でした。社長は大工上がりですが独学で一級建築士を取得した人で、真面目を絵に描いたような人でした。小生がお世話になった頃には4階建ての自社ビルを構えていて、1階が駐車場と資材置場、2階が事務所と食堂、3階が社長の自宅、4階が社員の独身寮になっていました。寮には、小生のような技術者や大工の職人もいて、同じ釜の飯を食べていました。この工務店の特徴は、大工の職人をいわゆる“常用”で抱えていたことです。従って仕事に妥協がなく、非常に質の高い建築を作っていて、高い評価を受けていました。小生も設計・積算・現場監理と建築生産の一通りを学ぶことができたのは、今となっては貴重な経験でした。昼は現場監督として現場に赴き、夕食を済ませた後、事務所へ降りて行って図面を描く、という日々でした。おそらく、同世代の人と比べ、何倍も働き、学んだと自負できます。特に木造住宅の納まりについて、社長直々に教えてもらいました。同郷ということもあって、可愛がって戴きました。
数年前、社長の喜寿を祝う会が、“弟子”たちの呼び掛けで開かれました。小生は弟子としては最後に近い世代ですが、当時同じ寮にいた兄弟子たちと久し振りに再会しました。皆さん立派に独立され、活躍されています。小生もこの道でまがりなりにもやって来られたのも、この社長の弟子として修行できたからだと感謝しています。今日の葬儀にも弟子の皆さんが大勢参列されました。30年以上経っているのに、珍しいことです。
社長は晩年はパーキンソン病を患い、不自由をされましたが、息子さんが立派に会社を継いでいます。晩年の介護をされた娘さん(当時はまだ高校生でしたが)はジャズシンガーとして活躍しています。いつか小生もそのステージを拝見したいものです。
心よりご冥福をお祈りします。