10時と3時のいっぷく

零細建築設計事務所の日常とその周辺を、コーヒータイムに綴ります。

新しい確認書類

2007年10月29日 | 未分類
6月の建築基準法の改正で、確認申請がだいぶごたごたしているニュースが流れていますが、とうとう私もその申請をする段取りになりました。新しい書式はWebサイトからダウンロードできるので助かります。ただ、それらのファイルはほとんどが“ワード”で作られています。ワードということはワープロソフト、私はこれまで、これらの書類はデータベースで作って来ました。その理由はワープロですと、例えば「申請部分の面積○○ 申請以外の面積○○…」というような項目があった場合、○○に入力すると、その後の文字がその分ずれてしまいます。それをまた元に戻すのに結構手間が掛かったりします。こういう場合、データベースですと入力部分だけ打ち込めますし、いちいちカーソルを移動しなくてもtabキーで自動的に移動でき、しかもtabの順序も設定できます。また、表計算ソフト同様計算を自動でやってくれますので、書類の作成時間は随分短縮されます。今日は一日掛かって、新しい書式を作り直しました。

新しい確認書類は、第1面から第5面まで合計8ページ(改正前は5ページ)で、これを正、副、市町村の控え、消防の控えと4部作りますから、最低32枚のA4コピー用紙が必要です。さらに、シックハウス関係の換気計算や軸組計算なども、私の場合は図面でなく同じくデータベースで作っていますので、これが1部あたり6ページ、これ以外に1部ですが「建築計画概要書」が6ページ(改正前は4ページ)、建築工事届が4ページ(変わらず)で数えますと合計66枚の用紙を消耗することになります。これに設計図(A2)を1部あたり5枚添付します。図面も“明示すべき事項”が随分増えたようで、確認申請書類の作成に掛かる手間も結果的に増えます。

考えてみますと、私が事務所をはじめた頃は、確認申請の書類はB5サイズ1ページで済んだのです。それがいつ頃か役所の書類がA版に移行した時にA4-5面に変わり、その後細かい改正に伴い、内容も少しずつ変わって来ました。かつてB5-1枚に書いて来たことが、今ではA4-8ページに増えた訳で、かつて行政改革だの簡素化だのと叫んできたことが一体何だったのか、と首を傾げたくなります。
我々建築士の最終的な目的は、より良い住環境を作ることで、そのための一つの条件が「確認申請」制度だとは思いますが、それがあたかも目的のような風潮になるのは危険なことです。もっと大きな視点で建築というものを考えるべきだと思います。

さよなら「ホモ・モ-ベンス」

2007年10月12日 | 未分類
建築家の黒川紀章氏が亡くなりました。73才ということで、今の世の中では少し早かったのではと驚いています。今年の東京都知事選や参院選に立候補して話題になりましたが、建築家としての黒川氏の功績は何と云っても“建築家”という職業を大衆に知らしめた、ということに尽きると思います。氏の言動は建築のみならず社会全般のことについてなされていましたが、そういうことはそれまでの建築家像にはあまり無かったことではないでしょうか。私が初めて氏の著作を読んだのは高校生の時で、『ホモ・モーベンス』という本でした。この本は建築論のみでなく、広く社会全般の事を書いたもので、現在の情報化社会や車社会を予測したものでした。“ホモ・モ-ベンス”とは“動く人”という意味で、それまで人間の特質を定義するのに“ホモ・サピエンス(考える人)”や“ホモ・ファ-ベル(作る人)”などと云われていましたが、黒川氏は“ホモ・モ-ベンス”という捉え方で現代社会を表現していました。氏の生き方そのものが“ホモ・モ-ベンス”だったと思います。建築家としての作品については、人それぞれ好みや評価の違いがあるでしょうが、私の個人的な好みで云えば、“福岡銀行本店”や“奈良市写真美術館”です。ご冥福をお祈り致します。

追伸:私も“ホモ・モ-ベンス”に倣って、数年前から“ホモ・リンケンス(繋がる人)”という言葉を提唱していますが、誰も関心を持たないようです(笑)

思いがけない贈り物

2007年10月05日 | 未分類

当事務所が設立25周年を迎えた今日、思いも寄らぬ届きものがありました。現在工事がほぼ完成し、明日引渡し前の確認をして頂く「葡萄の丘の洋館」のお施主さんであるOHさんから、25周年のお祝いの花束が贈られてきたのです。このお心遣いに感激です。OHさんは現在県外にお住まいですが、定年退職後故郷に帰られて永住するということで、インターネットで色々調べられて、当事務所のサイトに当たったと言う訳です。丁度2年前に当事務所に初めてお見えになって、その後打ち合わせを重ね、5月下旬から工事に掛かりました。
丁度明日が完成で、それに合わせたかのように25周年を迎え、思わぬお祝いを頂戴し、仕事冥利に尽きると言うか、この不思議な縁を大切にしていきたいものです。OHさんもこのブログをよくご覧になっておられるようで、私が25周年なんてことを書いたものですから、返って要らぬご心配を掛けてしまいました。本来は電話でお礼の言葉を言わなければいけないのですが、口下手な私は上手く感謝の気持ちを伝えられないと思いますので、このブログ上で失礼させて頂きます。それにしても、こんな感激は本当に久し振りのことです。ありがとうございました。