しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「誓約」  薬丸岳 

2016年03月10日 | 読書
「誓約」  薬丸岳   幻冬舎   

向井聡は川越で、15年前に知り合った落合幸弘と一緒に『HEATH』という店を持っていた。
向井はバーテンダーで、落合は料理人だった。
知り合った時は、向井は30歳で落合は29歳。
落合は店を持つため、バーテンダーを探していて向井に話しを持って来た。
今まで落ち着いた生活をして来なかった向井だった。
これを機に、生活も落ち着き、結婚もして帆花という娘にも恵まれる。
そんな向井の元に一通の手紙が届く。差出人は、坂本伸子。
そこには便箋に「あの男たちは刑務所から出ています」とだけあった。
それは、店を始める前にあった思い出したくない出来事だった。
向井はその時に命にかかわる窮地に陥っていて、それを救ってくれたのが坂本伸子だった。
だがその代わりに、もう直ぐ病で死んでしまう自分に代わりに、娘の復讐を頼まれたのだった。








物語としては面白い。
被害者の気持ちや、遺族の気持ちが痛い程伝わって来る。
重いテーマでもあり、色々考えてしまう。
謎解き要素も高く、どんな展開になるか期待して読み進める。
後半は同じような繰り返しで、多少のペースダウンもある。
犯人より、向井がどうするのかが焦点。
最後は何故と疑問に思っていたことも、ちゃんと考えられて書かれていた。
ただ、向井が“嫌な奴”で段々落ち着かない気持ちになる。
余りにも自分勝手な考え方。
確かに、殺人なんて簡単に出来る事ではない。
それでも、約束したのは自分だし、それに助けられてもいる。
その時も、どうせ果たさなくても分からない約束だと引き受けたのだが。
あれほどの坂本伸子の気持ちを、どう心に刻んでいたのだろう。
すっかり忘れさる程の事だったのだろうか。
自分の命の恩人なのに。
復讐が目的なら、殺す以外の他の方法を考えるとか。
まあ、相手の目的は違う所にあったのだが。
自分の妻子をなんとか助けたいと言いつつ、それには自分も何事もなく助ろうとしている。
そして、自分の犯した罪は軽いと判断。
罪の重い軽いは、受けた被害者が判断するもので、加害者が言う事ではない。
そして服役はしているが、その罪の贖罪をしているとも思えない。
それに公平の気持ちも、本当にそんな風に感じるものだろうかと疑問。
最後は爽やかな終わり方にまとめているが。
正体が知られてしまったら、15年前と同じ危険が迫っているのではないのだろうか。
もうそんなことがすっかり忘れているのだろうか。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「イニシエーション・ラブ」... | トップ | 「ソロモンの犬」  道尾秀介  »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事