しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「殺人者の涙」 アン=ロール・ボンドゥ 

2009年07月14日 | 読書
「殺人者の涙」 アン=ロール・ボンドゥ      小峰書房
 Ies Larmes de l’Assassin  伏見操・訳
  
チリの最南端、南太平洋の冷たい海にノコギリの歯のように食いこむ地の果て。
そんな荒野に、夫婦と幼い息子が住むポロヴェルド農場がある。
人が来ることは本当に珍しかったが、一夜の宿を求める旅人を受け入れていた。
そこに、アンヘル・アレグリア、「天使(アンヘル)」と「歓喜(アレグリア)」という名前を持つ殺人者がやって来る。
アンヘルは逃亡生活を終わらせるために、ポロヴェルドにやって来た。
アンヘルはためらいのなく夫婦を殺したが、息子のパオロは殺せなかった。
思ってもみなかった良心か、わずかな憐れみか、アンへルにも分からなかった。
そして、2人の生活が始まる。 



何だか、不思議な雰囲気の物語。
鉛筆のデッサンのような、暗い乾いた感じ。
内容からすると、かなりどぎついのだが。
乾いた感じ、それは、パオロの心が空っぽだったから。
そして、殺人者のアンヘルの荒々しくザラ付いたものを持ちながらも心の奥は空っぽだったのだと思う。
空っぽ同士が一緒にいることによって、何かが沸き起こって来る。
その何かは、第三者が加わったことで、感情としてはっきりし出したのかも知れない。
アンヘルの感情は、最終的には愛情に変わる。それも無償の愛。
パオロの方は大人になるまで待たなければならなかった。
パオロが空っぽの心を埋めることが出来たのは、自分の家に戻ってからだったと思う。
それまでは、虚しい思いだけを抱いていたのではないだろうか。
希望が出ると打ち砕かれる、虚しく、なんとも言えず遣り切れない物語だった。
しかし、ラストはデッサンに少し淡い色が入り、明るくなった感じがした。
天使が天使として降りて来たのかも知れない。

人間は今まで触れたことになかった事に触れると、変わって行くものだろうか。
人間は変われるものだろうか。
この物語は絵画や詩、音楽も人を変える要素になっている。


これは児童書扱いになっている。
子どもが読むには、ちょっと感情的に厳しい気がする。


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