しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「アンネ、わたしたちは老人になるまで生き延びられた。」 テオ・コステル 

2015年12月07日 | 読書
「アンネ、わたしたちは老人になるまで生き延びられた。」   テオ・コステル   清流出版     
クラスメートたちがたどる アンネ・フランク の思い出
  WE ALL WORE STARS     Memories of Anne Frank from Her Classmates     桜田直美・訳

14歳の時、ユダヤ人中学校でアンネ・フランクの同級生だったテオ・コステル。
テオは潜伏生活で生きのび、戦後はイスラエルに移る。
テオは学校などで戦争体験を語り、アンネのクラスメートだったことも語っていた。
2007年、80歳近くなり何度も語ることに体力的にきつくなったと妻に話すと、体験を映画にする事を勧められる。
テオは、当時のクラスメートを捜し、ドキュメンタリー映画を作る事を決める。
5人のクラスメートに会い、アンネの事や独自の体験を語り合う。
そして、2008年3月、映画『アンネ・フランクのクラスメート(Classmates of Anne Frank)』は完成する。
この本は、そのクラスメートと語り合ったことが書かれている。





残念ながら、この映画は日本ではまだ見られないようだ。
アンネ・フランとそのクラスメートたち。
友達として語るアンネの姿は、日記から感じるのとはまたちょっと違って新鮮だ。
アンネと同じように、ひとりひとりにそれぞれの物語がある。
本当に、ひとりひとり違う体験をして、ちょっとした事が生死を分けてしまう。
そんな極限の状況を作ってしまった時代があったと言う事。
アンネと同じ強制収容所にいた人もいた。
13、4歳の子どもたちが見て体験した過酷な戦争の様子が生々しい。
だたその事実を知って、受け入れるだけしか出来ない。
そんな体験をして、それでも前向きに人生をとらえようとする人たちに、勇気づけられる。

章のタイトルに「苦しみの大小」と言うのがある。
「苦しみの大きさを比較することは出来ない。大切なのは、体験したそれぞれ個人の受け止め方」
そうだと思う。
優劣を付ける物ではないはずなのに、実際にはそういう事は確かにあるだろう。
それも、他人が大小を付ける。どんな意味があるだろうか。
苦しみに追い打ちを掛けているだけ。
生き残ってしまった事を苦しむ人もいる。悲し過ぎる。

悲惨な状況でも、それをその時は受け入れてしまう。
ユダヤ人だからと、色々禁止されるいわれはない筈。
でも、それを受け入れてしまう。
理不尽なのだけれど、それを異常と思えなくなる心理状態。
そんな事がないような。
強制収容所に入れられる事も、理不尽過ぎるのに。
同じ人間なのに、何でこうも傲慢になり残酷になれるのだろう。
全てがマヒしてしまう。
それが戦争なのだ。
そう言う事を知って記憶して行くことが大切なのだ。
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