しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「儚い羊たちの祝宴」   米澤穂積 

2013年11月21日 | 読書
「儚い羊たちの祝宴」   米澤穂積       新潮社     

5編からなる短編集。

「身内に不幸がありまして」
孤児院でそだった村里夕日は5歳の時に丹山家引き取られる。
長女、吹子の遊び相手としてだった。
吹子は秘密の書棚を作り、その本を夕日も読んでいた。
木々高太郎、小酒井不木、浜尾四郎、海野十三、夢野久作、江戸川乱歩など。
『マクベス』『夜歩く』『十日間の不思議』、海野十三『地獄街道』。
その中に『アルプスの少女』も。
吹子は、大学で「バベルの会」という読書会に入る。
その会が毎年8月1日から、蓼沼の別荘を借りて読書会を開く。
それを楽しみにしていた吹子だが、2日前に丹山家で悲劇が起こる。

「北の館の罪人」   
六綱家の妾腹として生まれた内名あまり。
母親が死ぬ時にその事を聞き、六綱家を訪ねる。
当主は、腹違いの兄光次が継いでいた。
光次は、あまりを別館に住まわせ、先客の世話をさせる。
先客とは、光次の兄、早太郎で、幽閉されていた。
あまりは早太郎の頼みで、何に使うか分からない物を買いに行かされる。

「山荘秘聞」
家事全般を完璧にこなす、屋島守子。
八垣内にある別荘、飛鶏館の管理を任されていた。
しかし、訪れる客がなく、腕の振るいようのない事に不満を感じていたある日。
遭難者、越智靖巳を見つけ助ける。
しばらくして、越智を捜しに救助隊が訪れるが、屋島は遭難者のことは知らないと言う。

「玉野五十鈴の誉れ」
名家、小栗家は祖母が仕切っていた。
一人娘の純香は大事に育てられ、15歳の時、玉野五十鈴を使用人として付けられる。
使用人とはいえ、親友のように付き合えて、純香は楽しく生活を送れた。
しかし、大学生になった時、婿養子だった純香の父親の伯父が殺人を犯し、父親は離縁させられる。
殺人者の血が入っていると、純香も疎まれ玉野五十鈴とも離される。
五十鈴は、もう祖母の言う事しか聞かない使用人の態度になる。

「儚い羊たちの晩餐」
大寺毬絵は「バベルの会」の会員だったが、父親が会費を出し渋り、除名される。
大寺家は金持ちだが、父親は自分の周りにいる富豪を争っていた。
そして、『厨娘』という宴の料理だけを作る、特別な料理人、夏を雇う。
夏は、少しの料理を作るのにも、大量の食材を買う。
それは、その中で使う部分が少なく、それを客に見せて、贅沢さを示すものでもあった。
しかし父親はそのことを知らなかった。
毬絵は夏に、食材として「アミルスタン羊」を要求する。
そして、アミルスタン羊の狩場として、蓼沼に夏の盛りに湖畔に現れると進言する。







『バベルの会』という共通点があるが、関わりは薄い。
静かな語り口の、ホラーな物語。
人を殺すことは、ある目的を達成させるためで、恨みがある訳ではない。
そんな共通点はある。
でも、あまり怖く感じない。
なんだか、カーテン越しに見ている物語みたいだからかも知れない。
「北の館の罪人」の、殺す者と殺される者の、お互いが分からぬように仕掛ける罠は面白かった。
「玉野五十鈴の誉れ」の『始めちょろちょろ、中ぱっぱ~』は、なるほどと思ってしまった。
「儚い羊たちの晩餐」は、その後の後始末はどうなるのだろ、と。
もしかして、生きたまま必要な部分を取ったとか、怖っ。


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