しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「刺青の男」  レイ・ブラッドベリ

2014年03月30日 | 読書
「刺青の男」  レイ・ブラッドベリ   ハヤカワ文庫NV  
THE ILLUSTRATED MAN       小笠原豊樹・訳

20話からなる短編集

その大男は暑い日なのにウールのシャツを着、胸もとから手首まできっちりボタンをかけていた。
男は全身に彫った18の刺青を、18の秘密の物語を隠していたのだ。
夜、月あかりを浴びると刺青の絵は動きだし、あえかな劇を、未来の劇を、18の物語を演じだすのだった…。
刺青の男とは、重苦しい過去と、それ以上の重苦しいかもしれぬ未来を一身に背負った人類である。
この18の短編は、宇宙旅行、原水爆、童心、宗教、宇宙人の侵略、人種問題などをテーマにした詩的で劇的な物語である。
幻想と詩情にみちた最も美しい、最も異様な短編集!
     <文庫本裏カバーより>

「プロローグ 刺青の男」
私は9月上旬のある日、刺青の男に出会う。
彼は身体中に18の刺青があり、その一つ一つが色彩豊かな絵画のように独立していた。
じっと見つめていると、その絵が動きだしドラマを演じる。
18の刺青の18の物語。

「草原」
すべて機械が取り仕切り、何もしなくても生活出来る家。
子どもは部屋をジャングルにしていた。
両親はそれを危うく感じ、その家を捨てようとする。

「万華鏡」
事故で宇宙空間に投げ出された男たち。
それぞれ通信で話をしながら、それぞれの場所へ。
ホリスは大気圏に突入していく。

「形勢逆転」
火星に黒人が移り住んで2千年。
始めて白人がやってくる。
地球で受けた仕打ちを、そのままやってやろうとした黒人。
だが、白人の老人は原爆の戦争でほとんどの国が焼か尽くされたと話し、それを聞いた黒人は。

「街道」
街道の側に住んでいる、農夫のエルナンドと妻。
ある日、いつも通る車がその日は通らない。
しばらくして、何台か通った後、最後と思える車がやって来る。
その車に乗っていた人は「戦争が起こった。この世は終わりだ」と言う。

「その男」
ある星に着陸したロケット。
最初に到着したはずなのに、歓迎の様子がない。
隊長のハートは、同じ船団のバートンが先に着いて自分を騙しているからと思う。
隊員のマーチンは、この星にあの男がいると住民から聞いてくる。
その男とは。

「長雨」
雨が止むことがない金星。
不時着したロケットの隊員たちは『太陽ドーム』を捜すが。
やっと見つけたドームは破壊されていた。

「ロケット・マン」
宇宙を飛んでいると、2度飛ばないと思うが、地球に居るとまた飛びたくなる。
ロケット・マンの帰りを待っている妻と子ども。
妻はもし、夫がのったロケットが墜落したら、もうその星は見られないと言う。

「火の玉」

「今夜限り世界が」
今夜限り世界が終わると、突然気が付く。
しかし何をするでもなく、夫婦は静かにベットに入る。
水道の蛇口をちゃんと締めたか気にしながら。

「亡命者たち」
「華氏451度」の続きと言うか、別の視点から見たような物語。
地球にはいられなくなって、他の世界に逃げた作家や物語の主人公を追ってやって来た人類は。

「日付けのない夜と朝」
ロケットの中、信じられるものが、確かなものが分からなくなるヒチコック。
何物もそのものの存在が信じられない。
手の存在、足の存在、ロケットの存在、そんな物は始めからなかった。

「狐と森」
戦争に重要な係りを持つ仕事がイヤになって、タイムマシンで過去に逃げた夫婦。
それを追って来た、政府の男。
追手は大掛かりな仕掛けで2人を捕える。

「訪問者」
不治の病で治療法のない伝染病。
掛かると地球外に追い出される。
その惑星で、話し相手を待っていたソールは超能力を持った若い男レオナードと出会う。

「コンクリート・ミキサー」
地球侵略に来た火星人。
然し地球人は火星人を歓迎するが。
落ち着きのない地球人の様子で、あまりの混沌とした感じに戸惑う。

「マリオネット株式会社」
自分そっくりのロボットが作れるようになる。
男は、それで妻を騙し一人で旅行に行こうとしていた。
しかし、ロボットはその男の扱いに不満を持っていた。

「町」
ずっと地球人に復讐をするのを待っていた町。
2万年前、地球人に滅ばされたから。
到着したロケットを地球人と間違いなく測定して判断。
町の復讐とは。

「ゼロ・アワー」
火星人は侵略の為、子どもを使うことを考える。
10歳以下の子どもたちを、協力者にする。

「ロケット」
ロケットに乗りたいとずっと憧れ、火星までの切符が1人分手に入る金が溜まる。
自分が行こうとして、家族がどう思うか友人からアドバイスされ、くじ引きにする。
妻が当たるが、ボドーニの気持ちを知っているから辞退する。

「エピローグ」
刺青の18の物語を見た男。
最後のもやもやがはっきりして、その男が自分の首に手を掛けるのを見て、慌てて逃げ出す。








SFの短編集。
ブラッドベリらしい、情緒と趣き。
短編としての面白さと、長編に負けない位の強い印象を残すのは流石だ。
宇宙人と人類の関係が、ちょっと怖かったりほのぼのしたり。
宇宙そのものの憧れや孤独、怖さは今の時代も変わっていない。
宇宙人と人類の関係、色々でどれが現実になるだろうかと考えてしまう。
ただ、今のままだと人類は宇宙人に出会う前に終わってしまうかもしれないが。
人類がどこかの星に移住して、その星人になることもないのだろうか。

「万華鏡」の宇宙空間を漂う様子は、先日観た映画「ゼロ・グラビティ」を思い出す。
そして、ラストはサイボーグ009・ヨミの国編のラストだ。
涙が出て、なんとも言えなく悲しいけれど、心が熱くなる印象的なラスト。
「今夜限り世界が」は、星新一さんの『午後の恐竜』を思い出した。
世界が終わるのと、地球が終わるのは、ちょっと違うのかも知れないが。




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