しましましっぽ

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「顔のない男」  イザベル・ホランド 

2017年10月31日 | 読書
「顔のない男」  イザベル・ホランド   冨山房    
 THE MAN WITHOUT A FACE    訳・片岡しのぶ

チャールズ・ノースタッドは14歳。
4人目の夫と離婚したばかりの母と17歳の姉グロリア、11歳の妹メグと4人で夏の休暇にニューヨークから半島にある別荘に来ていた。
それぞれ父親が違う兄弟姉妹で、グロリアとメグは優秀。
グロリアはチャールズと父親の悪口を言い、母も同調する。
チャールズは家も学校も居心地がいい場所ではなく、寄宿学校のセントマシューに入学する計画でいた。
ところが、グロシアが全寮制の教養学校に入る事になり、それなら自分は家に居てもいいと、わざと入試に失敗する。
しかし、突然グロリアが心変わりして、教養学校には行かない事になる。
チャールズはセントマシューの校長に手紙を書き、追試を受けさせてもらえる事になる。
夏休みの間に勉強をしなくてはならないのだが、なかなか手に付かない。
メグがチャールズに、ジャスティン・マクラウドに勉強を教えて貰えばいいと提案する。
ジャスティンは教師だったと言う。
今は一人で離れた丘の上で暮らし、村の店に週1回買い物に来る男で顔の半分に火傷の痕があった。
交通事故と言う噂があるが、真相は誰も知らなかった。
チャールズは頼み込んで、勉強を教えて貰う事になる。









愛情を知らずに育ったチャールズ。
母親からも姉からも、教師からも受け入れられなかった。
グロリアが3歳の時生まれ、嫉妬され目の敵にされたから。
母親があまり子どもには目が向いていなく、チャールズの父親にも含むところがあった。
自分の殻に籠る性格になり、4人目の父親とはうまく行かなかった。
愛とは胡散臭いものだと思っている。
愛想のない子には愛情を向けない教師も問題。
飛行機の作文に対して理解を示さないのは理解しようとする気持ちがないからか。
そんな人間関係の不運が重なっていたチャールズ。
メグは11歳にしてはしっかりして、世の中の事も分かって冷静に兄にアドバイスする。
メグからは愛情を感じられるが、チャールズにはその愛情を受け入れる要素がない。出来ていない。
1人称で書かれ、そんなチャールズの気持ちが良く分かる。
こんな気持ちを変えるのは、やはり大人の対応なのだろう。
ジャスティンのしっかりした気持ちが、チャールズを少しずつ変えて行く。
それが読んでいてホッとさせられる。
他人を傷つけるのが好きな人もいれば、傷ついた生き物に接するのが上手な人もいる。
誰に出会うかで大きく変わる人生。
世の中は厳しい。そんな事を思った。

3冊目の「顔のない男」というタイトルの本は児童書だったが、大人にも充分読み応えがあるのも。
繊細な物語。
人との係わり方についてなど色々考えさせられることも多い。
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