しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「五輪の薔薇」チャールズ・パリサー 

2006年08月24日 | 読書
19世紀初頭の英国。田園地帯の村、ホウファムで少年ジョン・メランフィーと母メアリーは人目を忍ぶように、ひっそりと暮らしていた。
ジョンには父親がなく、メアリーはその答えを教えてはくれなかった。
しかし、母が持つロケットのイニシャルや、隠し持つ古い手紙から、自分はハッファムではないかと思い、実際にこの地方にハッファムと言う家系があった事を知るが、真相は分からなかった。
ある時、ジョンとメアリーは散歩途中に豪華馬車に出会い、メアリーは動揺する。その馬車には自宅の銀器にある「五輪の薔薇」の意匠が付いていた。
ジョンは行ってはいけないと言われているホウファム荘園の古い館で、一人の少女、ヘンリエッタと出会う。
ヘンリエッタには、ハッファムと言う名前が入っていた。
それからまもなく、見知らぬ男が訪ねて来たり、ジョンが誘拐されそうになる。
メアリーはジョンに、自分達には危害を加えようとする敵がいて、その敵に見つかってしまった事を告げる。
ジョンとメアリーは敵から逃れる為、ロンドンに逃れる。
しかしロンドンで待ち受けていたのは・・・。

メアリーが隠そうとしたジョンの出生の秘密、5つの家系の絡み合い、ホウファム荘園の所有権を巡る争い、鍵を握る遺言状の行方。
陰謀渦巻くロンドンで、命まで狙われながら真実を知ろうとする、ジョンの戦いの物語。

原題タイトルの「The Quincunx」は「五点図形」。
それで、とことん5にこだわった作りになっているらしい。
はっきり分かるのも多いが、その他にもありそうだ。
5部からなる物語には、5つの家系の名が付いている。「ハッファム家」「モンペッソン家」「クロウジャー家」「パルフラモンド家」「マリファント家」
「五輪の薔薇」は4弁の薔薇が5つ、サイコロの5の様に配置された紋章である。



文庫本で5冊という長い物語だが、面白く一気に読ませる。
絵に描いた様な不幸が続いたり、数々の脱出劇があったり、劇的な物語(作り物)だと思うが、面白いからそれでもいい。
しかし、現実も色々あるからあながち物語的とは言えないかも知れないが。
しかし、こういう物語だとラストも絵に描いたようなハッピーエンドだが、これはハッピーエンドとは言えない、重苦しさのある物語。
これは、ジョンの思考の変化と言うか、世の中を知って、自分で考えることが出来るようになった成長かも知れない。ヘンリエッタの発言がそれを呼び起こすのだが。
物事は一面から見ていては分からないと言う。
ジョンをずっと応援しながら読んでいるので、そのジョンの戸惑いに、こちらも困惑してしまうが、それが、この物語に深みを与えている気がする。
正義とはなにか。法律を守る事が正義とはいえない世の中が、今も昔も続いている気がする。

しかし、かなり複雑な人間関係で、最後にジョンが祖父を断定して言うが、あの人が祖父なら、父親はあの人だが、どうしてその結論に達したのかが、今ひとつ分からないのだが。
それなら、母の言動と合わなくないか。
読み落としているのか、気になる。

19世紀の英、ロンドンの話しは他でも読んでいるので、何となく馴染みもあるし、この物語でも詳しくかかれている。
この時代は物語になりやすいのかも知れない。 
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