しましましっぽ

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「アルファベット・ハウス」 ユッシ・エーズラ・オールスン

2021年01月15日 | 読書
「アルファベット・ハウス」 ユッシ・エーズラ・オールスン  ハヤカワポケットミステリーブック                   
ALFABETHUSET         鈴木恵・訳

1944年1月。
ドイツの航空機工場の爆撃に向かうアメリカ空軍に2人のイギリス空軍のパイロットが加わっていた。
ブライアン・ヤングとジェイムズ・ティーズデイルで2人は幼馴染。
2人の任務は攻撃中に編隊から離れ、情報収集の為に写真を撮り、再び合流して祈帰投することだった。
しかし、撮影の途中で被弾しパラシュートで脱出。
敵に追われる中、走って来る列車に飛び乗りその場を脱する。
その列車は傷病者を乗せた列車だった。
2人は死んでいる兵士とすり替わる。
ブライアンはアルノ・フォン・デア・ライアンに、ジェイムズはゲルハルト・ポイカートとなる。
この2人はSSの将校で、搬送されたのは通称「アルファベット・ハウス」と呼ばれる精神疾患病院だった。
ジェイムズは多少ドイツ語が分かり、やがて自分たちの他にも偽患者がいる事を知る。
しかし、素性や偽患者と分かれば命はない。
電気療法や投薬を受けながら、2人は脱出の時を待っていた。
やがて、ブライアンだけが脱出に成功する。







幼馴染の親友が2人一緒に敵地で偽の精神疾患者の振りをして脱出の機会を待つ。
友情物語の要素もあるが、そんな生易しいものではない。
ドイツ語を多少分かるジェイムズと全く分からないブライアン。
そんな所でも2人の心境に違いが出て来る。
偽患者は他にもいて、その3人は仲間で夜中に自分たちの悪事を語り合う。
それを聞いているジェイムズは恐怖をより募らせていく。
2人とも、お互いに相手を助けると思っているのだが。
戦時中の病院内の話も過酷だが、28年後の話も凄い。
訳が分からないまま、右往左往するブライアン。
偽患者の事を良く知らないと言えども、脱出の時命を狙われたのだから、もう少し何か策があっても良かったのでは。
そして、この物語は28年後に出会ったブライアンとジェイムズの心境がメインとなる。
ジェイムズの気持ちや感情は、きっと自分でも整理出来ないことなのだろう。
元通りに戻るはずのない2人の関係がかなり辛い。
こういう気持ちは自分の中で消化するか折り合いをつけるか、兎に角自分で解決するしかないのだろう。

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