しましましっぽ

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「ウナノハテノガタ」 大森兄弟 

2021年06月30日 | 読書
「ウナノハテノガタ」 大森兄弟  中央公論新社 

「螺旋プロジェクト」原始
ヤマノベのマダラコは森の霊が災いを退けてくれる生贄として燃やされる所だった。
その時、地震が起こりその混乱でマダラコは逃げ出す。
そして、果ての崖を降り始める。
イソベリがオオクチ壁と呼ぶ崖が崩れ、オトの母ザイガイは岩に潰される。
頭が潰れ動かなくなったザイガイはサヤ舟に乗せて島に運ぶ。
島でザイガイは元通りになり、やがてウロコが生え、イソベリ魚になると言う。
島に行けるのはハイタイステルベで、オトの父、カリガイだった。
カリガイは次にハイタイステルベになるオトを島まで一緒に連れて行く。
島には大きなサヤ舟のようなものが横たわっていた。
カリガイはその中にザイガイを連れて入って行く。
オトはその中で、イソベリ魚になっていない、たくさんの動かない崩れたイソベリを見る。
カリガイはこの島の事を絶対話してはいけないとオトに約束させる。
オトの友人のヤキマは聞きたがる。
シオダマリはイソベリが魚を取る所。
そこにはウナの使い、ウナクジラの骨が横たわっていた。
そこで、オトは手足がありイソベリに似ているが背中が毛むくじゃらなものを見つける。
それはマダラコだった。
オトの友人のヤキマは興味を持ち、世話をしては盛んに話し掛ける。







「螺旋プロジェクト」なるものに触れ、この先どうしようかと考える。
取り合えず、伊坂幸太郎さんのは読もうと思とったが、折角ならば物語の始めを読めば、海族と山族に対立が何故始まったかとかが分かるのかと思い手にする。
しかし予想とは違い、そのような始めの物語ではなかった。
海族の海族のイソべリはすでに、何かの争いから逃げて来た人達の子孫であった。
その子孫たちは「死」を知らずにいる存在と言うのが新鮮だった。
そして、地震によって崖が崩れ、上の土地から落ちて助かったヤマノベの人たちと出会う。
ここに、すべてを知る「ウェレカセリ」が登場する。
ウェルセカリが助言するのだが、それが最上とは思えない。
そして話し方も、何だか軽くて、存在のイメージと違うのが不思議。
しかも早々に退場するのだが、これは本当はマダラコが関わっているのではないかと疑っている。
言葉も風習も違う人達が出会うと、争いが起こるのは当然の事なのだろうか。
この物語の中には、争いを先導したマダラコがいた。
ヤマノベで生贄にされ掛けて、憎しみや怒りを持って、一足早くイソべリに加わったマダラコ。
彼女がいなければ、どんな展開になっていたのだろうか。
そして、イソべリは知りたがる事を悪としていた。
知りたがる、すなわち好奇心のある事はいけないことで、これは楽園を追われたアダムとイブに共通することなのか。
死を知らないままの世界、それはひとつの楽園。

始めは知らない言葉が多く読み辛かったが、段々分かるようになり気にならなくなる。
タイトルも、読み始める前はなかなか覚えられなかったが、やっと意味が分かり馴染んだ。
楽園を求める気持ちは、真実を知って世の中の辛さや不合理に悩む人に沸き起こるものなのだろうか。
「ウナノハテノガタ」は「海の果ての潟」
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