しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「シーソーモンスター」 伊坂幸太郎 

2021年07月02日 | 読書
「シーソーモンスター」 伊坂幸太郎  中央公論新社    

「螺旋プロジェクト」 
「シーソーモンスター」昭和後期
北山直人は嫁姑問題で疲労していた。
結婚後1年くらいで父が死亡し、母親セツとの同居が始まる。
妻の宮子は、同居には賛成してくれたが、同居を始めると全く上手く行かなかった。
直人は知らないが、宮子は国の情報員として働いていた。
人とのコミュニケーションについては訓練を積んできたので、関係を良好に保つ自信があった。
しかし、セツとの軋轢は始めて会った時から生じた。
その理由は宮子にもはっきり分からなかった。
やがて、宮子はセツにたいしてある疑問を持つ。
それは義父の死についてだった。

「スピンモンスター」近未来
水戸直正は小学3年生の時に2台の車が衝突する交通事故で家族を失い1人取り残される。
その事故を起こした相手も同じ様に1人を残して家族が死亡する。
その1人は直正と同い年の檜山景虎だった。
16歳の時、2人は同じ学校の同級生となった時がある。
それから10年近く経過して、直正は乗った新幹線で檜山を見かけ動揺する。
そんな直正に1人の男が封筒を託し立ち去る。
その封筒はセンサーに把握されないセキュリティレベルの高い物だった。
デジタル化によるペーパーレスが推し進められるが、デジタルは改変、流出などの被害が生じることから、今また重要な情報はデジタルよりアナログへと変わって行っている。
直正は配達人をしているので、手紙を託されることはあるのだが。
その直正に私服の警察官が声を掛ける。その中に檜山がいた。
その時、新幹線が緊急停車して警察官はそちらに行く。
新仙台駅に降りた直正は、預けられた封筒の中に入っていた手紙を届ける。
相手は中尊寺敦。
中尊寺から、手紙を託したのは寺島テラオで人工知能『ウェレカセリ』の開発責任者である事、
そしてその寺島が新幹線の高架から落ちて死亡した事を知る。
やがて、中尊寺と直正は誰かに追われ始める。








「螺旋プロジェクト」ではあっても、伊坂幸太郎さんらしい物語。
「シーソーモンスター」はちょっと日常とかけ離れたスパイや殺し屋が、普通に登場する日常。そして軽快な会話。

山族と海族は嫁姑問題にも持ち込まれるのだ。
離れて暮らしていれば問題はなくても、そうはいかない関係と言うのがある。
でも、ラストではちゃんと解決している。
そう、対立する2人が分かり合えたのは、共通の敵が出現したから。
(これは「天空の蒼」と同じ意味合い)
そんな対立もあれば、「スピンモンスター」の争いは人間対人工知能。
もうこれは多くのSFで登場していることだが。
この物語は「ゴールデンスランバー」を思い出させる。
監視社会と情報社会。何が真実なのか。
未来で紙の物に信頼を置いて復活すると言うのは分かる気がする。
何でもデジタル管理で本当に大丈夫なのだろうか、と疑う人間だから。
なんでもデジタルになったら、偽装も楽になるのだろう。
シュレッダーに掛けなくてもあっと言う間に消せる。
そして、記憶の自分自身による改ざんと言うのもある。
人は信じたい事を信じ、見たい物だけを見る。
始めは誤魔化しが入っていても、月日が経つとそれを真実だと信じてしまう。
世の中、確かなものはないということか。


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