しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「少年は残酷な弓を射る」  ライオネル・シュライヴァ― 

2012年10月25日 | 読書
「少年は残酷な弓を射る」  ライオネル・シュライヴァ―     上・下巻    イースト・プレス
We Need to Talk About Kevin           光野多惠子 真喜志順子 堤理華・訳

エヴァ・カチャドリアンは自ら海外を旅行し、若い人向きの旅行ガイドブックを作る会社を経営していた。
1年の半分を海外で過ごすが、夫のフランクリンとは幸せな生活を送っていた。
エヴァの母親は夫を亡くしてから“広場恐怖症”になり、家に閉じこもる生活を送っていた。
エヴァにも似たような気持ちがあったが、それを克服するように外に出ていった。
それは母のようになるのが怖かったことがあるが、同時に母親になることも怖かった。
自分の子どもを持つことは、考えてもいなかった。
ある時フランクリンの帰宅が連絡もなく遅れ、不安を感じた時、子どもが欲しいと強く思う。
そして、エヴァは37歳で妊娠する。
しかし、また子どもに対する恐れが湧き上がる。
妊娠中は、後悔や懸念もあったが、期待もあった。
1983年4月11日、ケヴィンを出産する。
しかし、出産した時に感動はなく、息子ケヴィンは母乳を拒絶する。
それ以来、ケヴィンは激しい反抗を繰り返すが、フランクリンには別の表情を見せる。
エヴァは、ケヴィンの中にある邪悪さを警戒するが、フランクリンは全く別の見方をしていた。
ケヴィンが16歳になる3日前、全米を震撼させる事件を起こす。

これは事件から1年半後から5か月掛けて、エヴァがフランクリンに宛てた手紙で語られる物語。








ケヴィンの起こした事件は誰の責任なのか。
それが、母親エヴァのせいなのか、持って生まれた性質なのか。
エヴァとフランクリンの血を受け継いでいるのだから、それだけでも親の責任はあるのだろうか。
本の紹介などで、事件についてははっきり書かれていないが、だいたい想像は付く。
アメリカで起きた学校に銃を持ち込んでの乱射事件も多数紹介されている。
ケヴィンの場合はもっと、狡猾な様相だが。
まるで、ホラーのようなケヴィンの存在。
生まれながらにして母親に敵意を見せ、それが続くと言うことは実際にはないだろう。
これは、母親のエヴァが書いていることなので、全てがそのまま起こったことにはならないかも知れないが。
しかし、ケヴィンの異常性が誇張されているにしても、似たようなことはあるのだろう。
実際、ホラーのようなことは現実で起きている。
圧倒されつつ、最後まで一気に読み進めてしまう。
どうしたらよかったのだろう、とも考えるが、どうしようもないのではとも。
もう、個人や一つの家庭だけではなく、社会の問題でもある。

最後にエヴァがたどり着いた心境は、いまひとつ自分にはしっくり来ない。
それまで全く見えなかった愛情が、ある時突然出て来るのだろうか。
あんな事件を起こしてから。
やはり世界は生きている人の為のもの。
生きなければ、なにも始まらない。
その生を暴力で奪い取った人に対する、罰には何が相応しいのだろう。

しかし、アメリカで多発している子どもの銃乱射事件。
銃規制がある日本ではない。
それだけを考えても、銃規制は必要だと思うのだが。
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