しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「魔法使いの弟子たち」 井上夢人 

2010年06月29日 | 読書
「魔法使いの弟子たち」 井上夢人     講談社

雑誌記者の仲屋京介は、山梨にある竜王大学付属病院で院内感染が発生した取材に赴く。
しかし、病院は死者がすでに16人、完全に隔離され近付けない。
京介は情報を得るために相談所になっている公民館に行く。
そこで、婚約者の安否を確かめに来ていた落合めぐみと知り合う。
婚約者の木幡耕三は医学部の学生で、ウィルスの研究をしていたと言う。
昨日会ってから連絡が取れないと言うめぐみ。
京介はめぐみが感染している兆候を見つけ、病院に隔離される。
発生当初、ほぼ100%の致死率、後に“竜脳炎”と呼ばれる新興感染症。
その中で命が助かったのは、4名。
京介とめぐみと耕三と、耕三が関わっていた患者の興津繁の4名だが、耕三だけは昏睡状態が続く。
やがて、3人は不思議な能力を身に付けていることに気が付く。
京介は透視、めぐみは手を使わずに物が動かせ、93歳の興津は段々若返っていた。




面白かった。
物語の展開も面白く、長い分印象的場面も多い。
映画にしたら面白いだろうなという、派手なアクションシーンもある。
しかし、京介と長谷川警視のやり取りが1番印象に残る。
同じ人間なのに、自分の職業や利害に関わる全く違ってしまう。
それを認めたくないと思えば、本当に見た事の方を信じずに、頭で考えた自分にとっての正当を信じてしまう。
お互いがどうしてそうなるのか分からず、絶対に受け入れあうことは無いのだろう。
今回は、京介側から見ているから、警察がいかに理不尽かを感じる。
しかし、第三者でいたら、どうなるだろう。

結構、こういう事はあるのかも知れない。
同じものを見ても、感じ方は人それぞれ。
しかしそれが、大惨事を引き起こす事でも変わらないなんて。
今回は職業が1番邪魔している気がするが。

結構、最後はやり切れない気持ちで、この終わり方も仕方がないかと思った。
しかし、ラストはもうひとつあった。
未来は変えられる、と言うことだろう。
しかし、この時点からどうしたら変えられるのかと考えたら、結構難しい。
1番の方法は、超能力を隠してしまうことなのだろう。
それは、3人に犠牲を強いる生き方になるのかも知れない。
結局、人間は新しいものを受け入れられないで、終ってしまうのだろうか。
そう考えたら、もっと前に戻って“竜脳炎”の発生を防げばいいのにと思うが。
そこまで戻ったら、今までのは何だったのかになってしまうか。
時間が関わる物語は、考え出すと混乱してくる。

しかし、完全防衛システム同士が対決したら、勝負は付かないのではないだろうか。
攻撃が跳ね返られたら、またそれを跳ね返し、と。
そのエネルギーは何処かへ行ってしまうか、消えてしまうのだはないだろうか。
それでないと、完全にはならない。
ボス猿を追い詰めている時もそう思った。

始めはどんな話なのか、予想がつかなかった。
タイトルの“魔法使いの弟子”はどこに出て来るのだろう、何が魔法使いなのだろうと。
物語はテンポよく進み、引き込まれて行く。
超能力が出て来て、やっとタイトルの意味が分かる。
あまりとらわれなくていいのだろうが、自分は結構タイトルの意味が気になる。
ファンタジーな世界の物語かと思ったが、ファンタジーにはならない、なれない世の中。


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