しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「訪問者」 Studio Life

2010年03月23日 | 観劇
「訪問者」 Studio Life
2010.2.27(土)~3.22(月)   紀伊国屋ホール

原作 萩尾望都    脚本・演出 倉田淳

「トーマの心臓」との連鎖公演。

<ストーリー>
オスカー・ライザーが9歳の時。
父グスタフは母ヘラを銃殺する。
放浪癖があり、仕事もうまく行っていないグスタフとヘラの関係はギクシャクしていた。
ヘラはグスタフとの離婚を望み、オスカーはグスタフの子ではないと打ち明ける。
学生時代の友人ルドルフ・ミュラーの子だと聞き、衝撃的に撃ってしまう。
そしてオスカーを連れて逃亡の旅に出る。
しかし、放浪癖のあるグスタフはオスカーの世話を続けることが出来ない。
1年後、ミュラーが校長を勤める学校、シュロッターベッツにオスカーを預け、南米へ行くと別れて行く。


<感想>
原作はそれほど長くないので、ほぼ原作通り。その他に、原作にない場面も追加される。
若い頃のグスタフ、ヘラ、ミュラーの青春を感じるさわやかなシーン。
そして、グスタフが子どもの時のこと。
これは、「凍った海に同級生が落ちたことがあった」という言葉から膨らませたシーン。
原作では、そんなことが合ったくらいの意味合いだったが、ここでは海に落ちて死んだのはグスタフの親友、トーマス。
そして、その死の責任をトーマスの母親から責められる。
この死がその後のグスタフにどれほど影響していたか、それは計り知れない。
この時の氷の音が、ヘラに接している時にも聞こえていたグスタフ。
何か問題があると、争う事を避けて、側を離れることで解決というか、なかったことにしてしまう。
真正面から人と向かい合うのが出来なかったグスタフ。
ヘラはそんなグスタフの感じる苛立ちをオスカーにぶつけているところもある。
「トーマの心臓」でオスカーは、ヘラは自分を溺愛したと言っていたが、溺愛していたようには見えない。
「パパは犬を飼っている。ママが飼っているのは僕」という台詞があるが(原作にも)、そのニュアンスがあっているのかも。
オスカー自身、ヘラが死んだ後の反応も落ち着いていて冷静。

オスカーは両親をパパ、ママというより一人の人間として客感的に見ている感じがする。
喧嘩ばかりしている両親でも、結構素敵な家族だと思うと言うオスカー。
本当にそう思ったのか、思い込もうとしていたのか。
しかし、とても優しく健気で素直な性格なのは何故だろう。
このオスカーの性格は、「トーマ」に真っ直ぐ繋がっていく。

漫画は「トーマの心臓」ほど読みこんではいなかった。
そして、感動の度合いも「トーマ」ほどではなかったのだが。
今回演じられているのを観て、オスカーの心情が痛いほど伝わり、とても感動した。
でも、悲しい寂しい物語だ。
信じあえなかったグスタフとヘラ。
そこからオスカーは人を信じる大切さを知ったのかも知れない。

登場人物が多いけれど、オスカーはほぼ出ずっぱり。
オスカーの子どもの頃の話しを観て、「トーマの心臓」のオスカーがよりわかる気がする。
家の中の子どもになりたかった、オスカー。
本当に優しいオスカー。




オスカー・ライザー 荒木健太朗
荒木オスカーは大好演。
見た目もオスカーだったし、微妙なオスカーの心情をとても細かく表していた。
グスタフに別れ切り出され時、自分がグスタフの助けではなく、裁く方だと知って別れを受け止める。
グスタフを守るために一生懸命だったオスカー。
子どものオスカーが反対に保護者になっていたみたいな。
そんな変化を観ていて感じられた。
それでも、最後は泣いてしまうオスカーがいじらしい。
揺れ動く気持ちがとてもよく伝わり、自分はすっかりオスカーに感情移入していた。


グスタフ・ライザー  高根研一
高根さんがトークショーで言っていたが、本当に情けない駄目な男。
それでも演じていて可愛いところもあって好きになったと言っていたけれど。
でも、絵葉書を出すと約束して、結局1枚も出さなかったのだよね。
南米には辿り着いたのだろうか。と、それも心配になるけれど。
うまくオスカーとも接することが出来ないのは、子どもの頃の出来事が影響しているのか、と思えた。
自分が持っている高根さんのイメージとグスタフの雰囲気が似ているので、すんなり受け入れられたキャラクター。
でも、ぶっきらぼうな感じだけど、トークを聞いていると、高根さんは以外とユーモアのある面白い人みたいだ。


ヘラ  吉田隆太
吉田さんは、ヘラのようなしっかりした大人の女性役が似合う。
本当に綺麗だと思えるし。
原作ではあまり生活感の見えないヘラだが、生活をして、妻としての苦悩を強く感じた。
かなり役作りで悩んだそうだ。
ヘラの考え方が分からない、なぜオスカーを産んだのかということから分からない、と。
倉田さんからのヘラの人物としてのアドバイスは「ヘラはクリスマスと結婚記念日にはケーキを焼くけれど、オスカーの誕生日には焼かないのよ」と言うもの。
ヘラは母親としての役割はあまり重要視していない感じがした。
グスタフがヘラの人生では1番の存在。
漫画もそう感じたし、吉田ヘラからもそう感じたのだが。
吉田ヘラの心の中はちょっと違うようで、凄くオスカーへの愛情に満ちている。
挨拶でも、「自分たちが幸せにしてやれなかったオスカーを見守って欲しい」という言葉があった。
演じていても、とても辛いと。
吉田ヘラはすっかり母親の気持ちなっている。


ルドルフ・ミュラー  船戸慎士
連鎖公演で、通して同じ役をするのは船戸ルドルフが始めて。
と言っても、連鎖公演は今回で2回目だそうだが。
若いルドルフは、校長から想像するよりもずっとくだけた明るい性格。
お調子者の要素もありそうな。
そんなルドルフが、威厳を持った硬い性格になったのは、年のせいばかりではなく、ヘラとのことがあったからかも知れない。
結局、結婚しないでいたのだから。
ヘラが子もを生んだことは知っていたのだろうか。
オスカーを直ぐに自分の子をして愛情を持つが、もし自分の子でなくても同じように愛情を注いだのかも知れない。
親友の子、と言うことで。
ルドルフはとても、愛情深い人なのだ。
「トーマ」では、オスカーと心を通わすことが出来て、お互いに良かったと思える。


シュテファン  植田圭輔(客演)
とっても可愛いシュテファン。
この役を及川さんが演じた写真を見たことがあるが、同じ形の毛糸帽子を被っていた。
植田シュテファンを観ながら、及川さんを想像していた。
後、及川さんはワイン祭りの娘だったが、植田さんは娘役はなく、トーマス少年。
こちらも可愛かった。


エンゲリーカ  関戸博一
金髪の少女は、「死の泉」の役を思い出すが、金髪が似合う関戸さん。
これは自分の好みなので、見られて嬉しかった。
前は山崎さんが演じたそうで、挨拶の時に関戸エンゲリーカに不満を表明。
それを聞いて、関戸さんは手を挙げて“イェー”って感じでアピール。
“オエッ”って山崎さん。仲いいんだ。


ワイン祭りの娘
目立っていたのは山本芳樹さん。
「最近こんなのばっか」って言っていたけど。
なんだか弾けている芳樹さんを見るのは楽しい。
ユリスモールで深刻になるから、いい気分転換になっているかな。


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