中原聖乃の研究ブログ

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ブラボー水爆実験

2015-06-24 06:42:05 | 核実験

 

 マーシャル諸島で行われた核実験のうち、とりわけ甚大な被害をもたらしたのが、1954年3月1日に実施された「ブラボー(Bravo)」水爆実験である。ロンゲラップの人々の従来の生活圏であるロンゲラップ、ロンゲリック、アイリングナエ環礁に降りそそいだ放射性降下物「死の灰」で被ばくした82人の中には、吐き気、頭痛などの急性放射線障害を発症した人もいた。公文書によると大人の30%に症状が現れたという。3日後に救出された人々は、避難生活ののち1957年に故郷のロンゲラップに帰郷し、しばらく同地での生活を続ける。しかし、そこには曲がったココヤシ、奇妙なところから実を付けるタコノキ、コブのある魚など、放射能の影響と考えられる生態系の異変が見られた。ブラボーから数年後には白血病、ガンなどの挽発性放射線障害を発症する人も現れた。

 こうしたなか、1981年に米国が公表した『北部環礁の放射線の意味』によって、ロンゲラップ環礁が核実験場であるビキニ環礁と同程度の汚染度であることがわかり、1985年5月には、放射能の危険性を考慮して住民295人が集団でクワジェリン環礁メジャト島へ再避難した。今日まで、ロンゲラップ(写真上)から南に約210キロメートルに位置するクワジェリン環礁メジャト島(写真下)を「中心的居住地」として避難生活を継続している。メジャト島は、0.12平方キロメートルと小さく、ロンゲラップの人々の生活圏であるロンゲラップ、ロンゲリック、アイリングナエ環礁の3つの環礁の合計面積の54分の1でしかなかった。この広さでは、人口を養うだけの充分な食料の確保が困難で、最初の10年間は米国からの食料援助やロンゲラップ地方政府からの食料援助が占める割合が半分以上を占めていた。

 


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