中原聖乃の研究ブログ

研究成果や日々の生活の中で考えたことを発信していきます。

マーシャル諸島でのデジタルアーカイブワークショップ延期について

2020-03-08 20:37:11 | 研究報告

なんと、2か月ぶりのブログ更新となりました。

マーシャル諸島では水爆実験ブラボーが行われた31日は、核被害者の日(Nuclear Victims Remembrance Day)として休日となっており、政府が毎年式典を行っています。日本でも、8月に広島や長崎でそれぞれの自治体の主催によって原爆投下の式典が行われますが、マーシャル諸島では国の主催で行っています(写真は2004年3月1日の様子)。今年度は、1日ではなく1週間に拡大され、大々的に行われたそうです。実は、今年度から始まった科研Cのプロジェクト「マーシャル諸島デジタルアーカイブプロジェクト」で、この核被害者の日の1週間のプログラムに組み込む形で、二日間の大掛かりなワークショップを行う予定でした。そして「マーシャルと神奈川の未来をつなぐプロジェクト」では、滞在期間中に、横浜にある神奈川学園の生徒の書いたお手紙をマーシャル諸島のコープスクールの生徒に届けてお返事をもらうというお手紙交換を行う予定でした。

ところが、コロナウイルスの日本での流行を受けて、出発の4日にマーシャル諸島政府から延期要請の連絡が入り、今年度の予定はすべて中止となってしまいました。今年末までには必ず実施するとの力強いお言葉をいただきましたが、まだまだ日本や世界での感染拡大は続いており、こればかりはどうなるのか、、、先の見通しは全くつきません。ワークショップはいかなくてはできませんが、お預かりしたお手紙は、先週金曜日に国際宅配便でマーシャル諸島にお送りしました。

科研には、さまざまな方がかかわってくださっています。まずは共同研究者の東京大学の渡邉先生のお二人の院生さんは、デジタルアーカイブを形にするお手伝いをしてくださっています。デジタルアーカイブをワークショップ形式で作っていくにあたって、ビキニふくしまプロジェクトの方々とのコラボで、デジタルアーカイブの枠組みを話し合うことができました。また長年お世話になっているフォトジャーナリストの島田さんが企画したマーシャル諸島スタディーツアーとコラボで、今回のワークショップを一緒にやってくださることになりました。第五福竜丸展示館の方々や学生さんはワークショップのお手伝いをしてくださることになりました。マーシャル諸島の佐藤さんは、日本側とマーシャル諸島政府との橋渡し役を担ってくださいました。そして地球研や、人間文化研究機構の先生方からは、熱意だけはあるけれども、マネジメント力の低い私に多くのアドバイスをくださり、励ましていただきました。オープンチームサイエンスプロジェクトからは、ワークショップの予算が足りないことから、地球研に対して増額予算の請求をしていただきました。こうしてきちんと書き出すこともせず、ただただ、日々の仕事をこなしていたような気がします。改めて書き記してみると、こんなにもたくさんの方にお世話になっていたのだと、、、改めて感謝いたします。

それなのに、こんなことになるなんて、、、いや、こんなときだからこそ、このプロジェクトにかかわってくださっている方々との関係を見直し、グループをきちんと組織化し、マーシャル諸島と密に連絡を取り合い、プログラムをより良いものに仕上げていかなくてはならないのだと思います。そしてなによりも、実は、、、コンピューターとネットが極端に苦手な私は、まずは、デジタルアーカイブ、SNS、アプリ・・・様々なものをきちんと使いこなせるようにならなくてはなりません。(目標が相当低いのですが、、、)

さきほどある方から、お手紙交換プログラムはマーシャル諸島の若者にとってどんな意味があるのか、と聞かれました。とっさには思いつかなかったのですが、よくよく考えてみると、お手紙を一度交換したくらいで、相手のことがよくわかるとか、マーシャルについてもっと知りたくなるとか、自分の書いたお手紙が相手に伝わった実感があった、、、なんてことはほとんどないのだと思います。おそらく、、うまくお手紙が書けなかったとかとか、考えていたお返事と違ったとか、お返事は来たけど意味が分からなかったとか、へんなこと書いてきたとか、さまざまな失望を味わうのだと思います。英語を習い始めたばかりの生徒が、たった一時間の私の話を講堂で聞いて、両国にいきなり素晴らしい対話が生まれることは残念ながらあり得ないのです。(そんなことがおこったら、それは人を陥れる黒魔術に違いありません。)それでも、生徒さんたちには、一回こっきりであきらめるのではなく、間をあけてもいいから頑張って対話を続けてほしいのです。あ~でもない、こ~でもないと考えるその過程こそきっと財産になるのです。たぶん、お手紙をやり取りする意味はそういうところにあるのではないかと思います。

一年間に一度もマーシャル諸島に行かなかったのは、ここ10年では初めてです。マーシャル諸島のみなさん、ちゃんと待っていてくださいね。