週刊 最乗寺だより

小田原のほうではなく、横浜市都筑区にある浄土真宗本願寺派のお寺です。

勝田山 最乗寺
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心を生かす道

2011-05-24 01:46:19 | ひとりごと

  (昨日5月23日付の読売新聞朝刊・「人生案内」より)


大学生の女子。
何をしていてもあのことばかりを思い出してしまいます。

あの日、私は祖母と一緒に逃げました。
でも祖母は坂道の途中で、「これ以上走れない」と言って座り込みました。
私は祖母を背負おうとしましたが、祖母は頑として私の背に乗ろうとせず、怒りながら私に「行け、行け」と言いました。
私は祖母に謝りながら一人で逃げました。

祖母は3日後、別れた場所からずっと離れたところで、遺体で発見されました。
気品があって優しい祖母は私の憧れでした。
でもその最期は、体育館で魚市場の魚のように転がされ、人間としての尊厳などどこにもない姿だったのです。

助けられたはずの祖母を見殺しにし、自分だけ逃げてしまった。
そんな自分を一生呪って生きていくしかないのでしょうか。
どうすれば償えますか。
毎日とても苦しくて涙が出ます。
助けて下さい。


  回答―海原純子氏(診療内科医)


お手紙を読みながら涙が止まらなくなりました。
こんなに重い苦しみの中でどんなにつらい毎日かと思うとたまりません。
ただあなたは祖母を見殺しにしたと思っていらっしゃいますが、私にはそうとは思えません。

おばあさまはご自身の意志であなたを一人で行かせたのです。
一緒に逃げたら2人とも助からないかもしれない、でもあなた一人なら絶対に助かる。
そう判断したからこそ、あなたの背中に乗ることを頑として拒否したのでしょう。

おばあさまは瞬時の判断力をお持ちでした。
その判断力は正しく、あなたは生き抜いた。
おばあさまの意志の反映です。
人はどんな姿になろうとも外見で尊厳が損なわれることは決してありません。
たとえ体育館で転がされるように横たわっていても、おばあさまは凛とした誇りを持って生を全うされたと思います。

おばあさまの素晴らしさはあなたの中に受け継がれていることを忘れないで下さい。

おばあさまが生きていたらかけたい言葉、してあげたいことを、周りに居る人たちにかけたり、してあげたりして下さい。
そのようにして生き抜くことが憧れだったおばあさまの心を生かす道に思えます。



…亡き人の心を生かす道とは、嘆きの中でそれでも生きていかなくてはならない者の心を生かす道ともなることを、こらえきれない涙と共に実感した言葉でした。