地上29階で行われた披露宴は、眺めもさることながら、お二人の門出を祝福する温かな雰囲気と、互いを想い合う優しい空気に包まれた会場だったようです。
私は新郎とは数回お会いしたことがあるのですが、新婦となられた方とは面識がありません。
けれど、今後坊守としてお会いする機会がいっぱいありますので、今から楽しみにしています。
では、お二人のご結婚を祝して、陰ながらこの歌を贈らせていただきたいと思います。
「祝婚歌」 吉野 弘
ふたりが睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気づいてるほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだとうそぶいているほうがいい
ふたりのうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと気づいているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には色目を使わず
ゆったり
ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
ふたりにはわかるのであってほしい
『贈る歌』(吉野 弘著,花神社)より「祝婚歌」全文を転載
(吉野弘氏のこの作品のみ著作権の発生なし)
…あれ?
これは幸せ絶頂なお二人にではなく、今の私たちに必要な歌なのかも…(汗)
あの頃を思い出せ、私っ!!