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佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

放射線科医の日常や、診療紹介、推薦図書などをご紹介します。問い合わせ先等、詳しくはカテゴリー「はじめに」をご覧下さい。

2009.01.10 第45回 九州MRI研究会 その1

2009年01月10日 21時22分04秒 | 研究会・学会
 久しぶりの研究会報告です。
 本日は、雪の降る中唐津で(波乗りじゃなく)仕事をしてから直に福岡に向かって参加してきました。初めての道をゆっくり運転していきました。

 これまで研究会報告をしてきましたが、やはり提示されるのは各施設の貴重な症例なので、どの程度詳細にしてよいのか、迷っています。よって、疾患名と勉強になったことを中心に報告してみます。

症例1.髄芽腫
 実は、今回ぼくが当てられていた症例です。新年1発目なので、「今年の佐賀大放射線科を占う発表だよ」と冗談交じりに言われていました。ぼくは真面目なので、「間違ってはいけない」とプレッシャーを感じていました。なんて。
 読影した症例なので、少し詳しく報告させていただいても良いかな。
 6歳男児 頭痛
 後頭蓋窩背側左側~正中よりに辺縁平滑、境界明瞭な類円形腫瘤あり。腫瘤左側には、小脳実質が回り込む像が見られるが、背側では小脳実質は同定できない(beak様)。小脳虫部は正中から右側に圧排されている。第4脳室との関係は指摘できない。T1WIでは、やや不均一な低信号。T2WIではやや不均一な高信号で、腫瘤内腹側辺縁~尾側の腫瘤外に走行するような血管様のflow voidが見られる。周囲小脳実質に明らかな浮腫をみとめない。DWIでは、全体に著明な高信号、ADC mapsでは周囲と同程度の拡散を呈しているように見え(0.8×10-3mm2/secとのことでした)、中心部に不整形の高ADC域を認める。造影後は、中心部付近に淡い増強効果あり。
 
 まず、intra-extra axialの鑑別から迷いました。腫瘤内部の血管は脳表の静脈のようであり、小脳実質に浮腫がないことからextra axial tumorが疑われるのですが、髄膜腫、神経鞘腫では腫瘤性状が全く合いません。
 と、するとintra axialか?となるのですが、腫瘤性状からMedulloblastoma(部位からは成人に多いタイプのdesmoplastic MBか?), ganglioglioma, oligodendrogliomaの絞り込みが出来ませんでした。ADC値の提示がなかったので、後2者については否定ができないのではないかと言う点と(周囲と同程度にしか見えませんでした)、小脳実質から発生したMedulloblastomaで浮腫がないのはどうなのか?という点が悩んだところです。

 解答は、Medulloblastoma(well differentiated)でした。
 解説は、ADC値による鑑別(pilocytic astrocytomaとの鑑別)を中心にしていただきました。参考文献は、少し前に紹介した文献と同じものだったかもしれません。

 結局、疑問点は解決できませんでしたが、「こんな・・・は無いよ。」という示唆をいただけたら幸いです。

 あれこれ書いていたら長くなってしまったので、症例2以降はまた次回にさせていただきます。