ツルピカ田中定幸先生

教育・作文教育・綴り方教育について。
神奈川県作文の会
綴方理論研究会
国分一太郎「教育」と「文学」研究会

二 「自己表現」を重視する文章表現指導で育つ力―その1

2011-06-25 18:37:56 | Weblog
 岡山のみなさん、先日は、私の「作文の授業」―その考え方・進め方―を長い時間きいてくださってありがとうございます。時間が限られていましたので、かんたんに触れた部分が、このブログのページです。             

         『子どものうちに育てておきたい心と表現力ー②』



二 「自己表現」を重視する文章表現指導で育つ力

(一)文章表現指導のねらい
「活動例」として追加した、(1)から(5)から生まれてくる文章を「生活文」とよぶ人もいます。とくに、(2)の「『ある日、あるとき』に起きた出来事で、考え感じたことを文章に書くこと。」をとおして生まれた作品を言う人がいます。
けれども、わたしは、そういうジャンルわけをしてはいません。あとで詳しくふれますが、子どもの表現意欲や興味・関心を大切にし、子ども自らが選ぶ題材と発想に着目した「書くこと」の指導なのです。子どもの成長・発達と、認識をふまえた指導なのです。
また、これを、「何を」、「どんな組み立て」で、「どう書く」か、「どう読みなおす」か。さらには、それを学級集団で「どのように鑑賞するか」という、子どもの文章表現の過程にそった授業を展開することを考えているのです。
生活綴方・作文教育の実践にもとづいた考え方がそこに受け継がれています。そのねらいは、次のとおりです。

  Ⅰ 子どもたちの自然や社会への認識、人間についての理解をひろめふかめ、ただしくゆたかにする。
  Ⅱ 「はじめ」「なか」「おわり」のくみたて・構成をもつところのひとまとまりの質のよい文章をかく能力をのばす   こと。
  Ⅲ みずからが文章をかくという言語活動のなかで、つまり言語の使用のなかで、日本語の発音・文字・単語・文法・   語い・文体などについての自分の知識をたしかめ、とぎすますようにさせること。
  Ⅳ ものごとをとらえ、また、とらえなおす過程と、それを文章に表現する過程とを、きちんとむすびつけたところ    で、子どもたちの認識諸能力(観察するちから、知覚し認知するちから、記憶し表象するちから、すじみちただしく   思考するちから、ゆたかに想像するちからなど)をのばしていくこと。 
                (注 教育文庫・17『つづり方教育について』(国分一太郎 むぎ書房 1985.8)

(二)「もの」と「こと」の結びつきで育つ表現技術・言葉の力
 この「自己表現」を大切にする文章表現指導では、表現技術が育てられないのではと、疑問に思う人もいます。また、じっさいに実践していなかったり、授業を観なかったり、実践記録をていねいに読まないで批判する人もいますが、そんなことはありません。
 「Ⅱ」にも書かれているように、子どもたちの発想にもとづいた「はじめ」「なか」「おわり」のある「ひとまとまりの文章」を書く力を育てます。書く活動では、表現したいこととむすびついた形で、「考えたとおりに書く力」「事実を書く力」「経過を書く力」「説明風に書く力」「事実(根拠)を入れて書く力」が、育ちます。これらの文章表現力が身につくと、手紙もかけるし、報告文や記録文、論説文などもかけるのです。
また、「自己表現」を大切にする文章表現指導では、子どもたち自身に題材を「えらぶ」ことと、「自分のことば」で表現することを大事にします。
 子どもたちは自分の感動や課題を文章におきかえて、客観的にみつめます。表現技術の獲得とあわせて、学習や生活の中にある価値を「書くこと」によって学んでいるのです。
これを、生活のなかにある意味やねうちを学ぶと言いかえたり、認識が深まるといったりもしています。(Ⅰ)で示したねらいはこのことをさします。
 「自分のことば」というのは「自分のものになった言葉」ということで、よく知っている言葉を「えらんで」書くようにさせます。このことの方が、ものやことと結びついた表現ができるのです。ことばを適切に使うことが習慣づけられるのです。文のねじれや、文のみだれがない、すじみちとおった文をつくりだすこができるのです。
 これは(Ⅲ)にも書かれているように、「日本語の発音・文字・単語・文法・語い・文体などについての自分の知識をたしかめ、とぎすます」ことになるのです。ここでもしっかりと、国語科教育のねらいを達成しようとしているのです。
それでは「語い」の力が育たないのではと言う人がいるかもしれません。が、言葉や「語い」の獲得は、国語科教育のもう一つのたいせつな分野である、「読むこと」の活動の中で、文章を詳細によませるなかで「語い」を豊かにするようにするのです。教科学習のなかでも、そこにでてくる言葉をしっかりと身につけさせるようにします。また、日常の会話のなかでも、言葉をゆたかにするように心がけることは言うまでもありません。
 その結果として、身についている「自分のことば」をつかって文章を書くようにさせるのです。こうした考えを大事にしながら文章表現活動をさせるのです。するとインターネットや本で調べたことを、そのまま写した文章を書くようにはならないのです。

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