ツルピカ田中定幸先生

教育・作文教育・綴り方教育について。
神奈川県作文の会
綴方理論研究会
国分一太郎「教育」と「文学」研究会

「おはなし」に題をつける

2011-05-28 23:54:04 | Weblog
どんな だいが つきますか


文字がだんだんと読めるようになってきたら、子どもたちの「おはなし」を黒板に書き写してあげる。

       わたなべ ゆみこ
  めの びょういんへ いきました。
  おいしゃさんが あっかんべーって やって
  めぐすりを いれました。
  おわった とき、
  めぐすりが たれてきたの。

 今の「おはなし」は、こんな話しだったね。と読んでみる。内容をたしかめた後で、「このおはなしに、題をつけてみよう。」と問いかけてみる。
 「めの びょういん」「めぐすり」「あっかんべー」などといろいろな題が出てくる。それを板書しておく。いろいろな題をみんなで考えた後で、話した人に、どの題がいいかを決めてもらう。
 ここでは、話した人が気に入った題をつけるのがポイントである。話した人の考えを大切にすることが何より、であり、話し手に自分が話したことが何だったのかふりかえらせるためでもある。
 題をつけたあとで、もう一度、題、話した人の名前、そして、話した事柄を読む。

 
 こうしたことを繰り返すうちに、子どもたちは、題をつけてから話し始めるようになる。
題をつけて話すと、その題とは関係ないことは話さなくなる。一つのことを選んで話せるようになっていく。連続している生活の中の一コマを選ぶという、題材の切り取りができるようになっていく。

  てつぼう
           つるた さなえ
  きのう
  うんどうじょうで
  てつぼうを やりました。
  まえまわりが できました。
  はじめて できました。



 この、「おはなし」に題をつける学習は、子どもたちもたのしみながら進めてくれる。そして、この時期の「話す・聞く」、そして自己表現力をそだてるためには、ぜひとも、とりくんでほしい「言語活動」である。
だからこのことは『育てたい表現力』――アルシンドの覚え書きーー(田中定幸著 一ツ橋書房)でも「題をつけて」として、次のように書いている。

    題をつけて

 みんなのまえで、「おはなし」をさせたものも「ぴかぴか」(一枚文集)にのせていく。また、その「おはなし」には、できるだけ題をつけさせて話させるようにする。ときには、みんなで題を考えたりもさせる。
            +
 なかには、題をつけるなどというと、そんなことが一年生の一学期にできるのかと言う人もいる。
 でも、子どもたちは、クラスの友だちの話をたのしみに聞き、いっしょになって考えてくれる。あとで作文をしょうかいするさきちゃんが、つぎのような「おはなし」をする。

  おとといの よる
  ごはんを たべおわってね
  おかあさんが あしを のばしたらね
  むしみたいのが あしの したを とおったの。
  あしの したを みてみたら、
  ごきぶりが いたの。
  「ひゃあ。」
  と おかあさんが いって、
  おとうさんに ごきぶりを とってもらったの。

 にこにこしながら話をするさきちゃんに応えて、クラスのみんなも笑いながら聞いている。そして、題を考えてくれる。

 「ごきぶりのはなし」
 「おもしろい」
 「おかあさんとごきぶり」
 「おととい」
といったような題がでてくる。
「さきちゃんは、どんな題がいい?」
と言うと、「おかあさんとごきぶり」がいいと言うのである。
「そう、では、いまのさきちゃんのおはなしは、『おかあさんとごきぶり』という題だね」と言って、メモを見ながらアルシンドがもう一度そのお話を読んであげる。
 題は、話したいこと、話したことを意識化させるためにつけるものである。
 そして、こうした話し合いが、「何を」表現するのかを考えるときにこれからさき、じょじょにつながってくれればいいと思っているからである。また、表現したいという意欲が高まっていけばいいと思っているからである。

                ◇一年生の教室だけでなく、どの学年でも工夫して実践することをおすすめします。



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