ツルピカ田中定幸先生

教育・作文教育・綴り方教育について。
神奈川県作文の会
綴方理論研究会
国分一太郎「教育」と「文学」研究会

三 「作文の授業」の原則-3

2011-06-30 21:58:58 | Weblog
      子どものうちに育てておきたい心と表現力-⑥


(3)授業は教師のはたらきかけを含めた子ども集団の学び合いである

 ここでわざわざこんなことわりを入れたのには、理由があります。それは、原稿用紙だけを与えて、あとはすべて子どもたちにおまかせという授業をしている教師がまだいるようです。「指導」ではなく、「支援」だなどといわれるようになって、それに力をえたかどうかは分かりませんが、すべてが子どもまかせにしていることがあります。子どもの持っている力に期待することは大切ですが、それ以前に教師が、どうはたらきかけるかが問題です。
 それとは逆に、作文であっても、ワークシートが作られます。その流れにそってすすめられては、なんで集団で学習しているのか意味がなくなってしまうこともあります。。
 学び合う集団の力を,どう生かすかも、授業のよしあしを決めるだいじな要素なのです。
 子どもたちは、教師に導かれながら学び始めます。子どもたちは、はじめは教師に導かれながらもやがてはその援助を抜け出して学んでいくのです。さらにすすむと、子どもたちどうしが、課題を出し合って集団で学習を進めていくようになります。
そのためにも、教師が、どこでどのように指導して個々を育て、それを集団のなかでいかに発揮させるか、常に考えて進めなくてはなりません。

(4)やさしいものからむずかしいものへ

 作文の指導であっても、授業であるからには、やさしいものからむずかしいものへと順にすすめられていかなければなりません。子どもの成長・発達に合わせて、学年毎のねらいを明らかにして書かせたいと思うのは、この考え方からくるといってよいでしょう。
具体的には、表現方法・技術といった事から考えたとき、題材の選択、構想のたて方、記述の仕方、推敲の仕方、観賞の仕方などについて、やさしいものはどのようなものかをおさえなくてはなりません。
また、指導のはじめには、どのような内容と形式をもった文章をかかせることが大切なのかその縦軸となる系統性も明らかにしなくてはなりません。

(5)学習は積み上げられていく

 そして、学習は積み上げられていくのです。その前に学んだ文章表現の方法と技術が、次の作文の学習に生かされなくてはなりません。「出来事の順に書く」という経験をさせたら、それを意識させて、「時間の順にはならない構成」もあることに気づかせます。そして、文章の構成は、大きく二つに分けられることを理解させていきます。
「ある日、あるとき」の出来事を書きつづった作文が生まれたとき、その作文の構成が出来事の順に書かれていることを確かめます。そして、文末の表現の多くが「…ました、」「…ました。」という過去形表現が多くつかわれていることに気づかせます。そのことを確かめたら、この作文に名づけをします。「ある日型」の作文と呼ぶことにします。すると、こんどは、別な作品がでてきたときに、その違いが明確になります。
 作文の授業であっても、定着させること。それを「積み上げて」展開することも大切なことなのです。

6)「実作」が大切である。

 「自己表現」を重視する作文教育では、内容と形式のすぐれている作品を手本としてあたえて書き方をおしえることを、できるだけひかえるようにします。「自己表現」を重視するところでも、述べているように、文章を書くときには、次のようなことが行われます。
 子どもたちは、生活体験をふりかえり、そのなかから一つのことを題材にえらびます。えらんだことがらを思い浮かべ、構想を練り、一つひとつの事実と言葉をつきあわせ、言葉をえらんで書きすすめます。文と文のつながりを考え、さらには書きたいテーマ意識しながら書きすすめていきます。時には、たちどまって、それまで書いてきた文章を読み返して、その続きを考えます。書き終わったら、読み直して、誤字や脱字をみつけたり、えらんだ言葉がぴったりしているかを考えたり、自分の気持ちをわかってもらえるために事実がきちんと書かれているかふりかえります。
 とても、繊細なしごとであり、集中力の求められる作業です。苦痛のともなう活動でもあるといえます。
 けれども、考えをめぐらし、ことばを駆使しながら文につづって、考えを目にみえる形にしていく活動は、文章表現独自の活動として位置づけなければならないことです。どう表現していくか悩み、考えるなかで、表現力は鍛えられていのです。こう考えて「実作」の大切さを授業の原則の一つに位置づけておきたいのです。
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