ツルピカ田中定幸先生

教育・作文教育・綴り方教育について。
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心のケアと自立のための日記指導-17 [行事のあった日の家でのことを書く ]

2016-04-22 18:49:51 | Weblog

          心のケアと自立のための日記指導-17 

 

(2)「会話」のある場面を日記の題材に

 

   ③行事のあった日の家でのことを書く

 

「ある日、ある時」の、短い間の出来事を、その時、したことや見たことだけでなくその時の会話をよく思い出して、時間の順序にしたがって書く。すなわち、一つの体験「~した。~した。」「~しました。~しまし。」「~したのだった。」「~したのでした。」と展開的過去形表現形体」の文章を書くときに、大事な会話を落とさずに書く力をつけるとともに、日常の会話に興味を持たせ、会話のもつ重要性を理解させることをここでのねらいとした。

 劇が終わった時に「今日の劇、上手にできたね。家の人は何て言ってくれるかなあ。何て言ってくれたか、次の日に発表してもらうよ。家の人がこない人だって、きっと今日の劇のことを聞くと思うよ。

 そのことを話してくれればいいんだよ」と言っておいた。

 文化祭の日や、運動会、授業参観があった日などは、家で必ずそのことについて話し合う。会話がはずむに違いない。

 そこに目をつけ、作文を書くから(日記に書くから)「よく聞いてこい。」とは言わないにしても、どんな会話をしたのか、耳と心をはたらかせるように言っておいて書くようにする。

 そうして、その会話をよく思い出して、しっかりと文章化させることにより、時と場所、話の内容にあわせて、ありのままの文章を書くようにさせる。また、その時の人びとの会話にこめられているその人の考え、会話の意味などに気を配れる子どもに育てたいと考えた。

 

      『家に帰って』                 優子

 

 家に帰りついてから

「ただいまあ。」

とお母さんに言った。そうしたらお母さんが、

「お帰り」

と言った。

 わたしは、どうだったのかなあと思いながら、

「お母さん、文化祭、どうだった。」

と聞いた。そうしたら、お母さんが、

「よかったよ。」

と言ったので、わたしは、

「どこがよかったの。」

と聞いたら、

「そうねえ、みんなで話を考えて、先生がまとめたと聞いたけど、話のなかみが、教えられることがいっぱいでよかったね。それに、声もよくとおったし、先生も出られて、全体にまとまりがあったと思 うわ。」

わたしは、そうかなあと思っていました。そしたらお母さんがまた続けて、

「山がりっばにできていたけれど、だれが書いたの。」

と聞いたので、わたしは、

「だれが書いたのかは、わすれたけれど、グループで書いたんだよ。わたしは、草を作ったんだよ。」

と説明してあげた。さいごにお母さんは、

「田中先生の歌もじょうずだったわ。あんなにうまいとは知らなかったよ。」

と言っていた。わたしも、田中先生にならっていたけれど、歌がうまいとは、あまり思っていなかった。

(以下略)

 

「優子さんのお母さんは、こう言ってほめてくれたんだね。」と、ほめている部分を二度ほど読んで上げたら、他の子どもたちが、ぼくのお母さんは、こうだと、作品を読みはじめた。そうして、「会話もそのとおりうつすと長くなるなあ、よく聞いてなければ書けないなあ」という感想をもった子もいた。

 

● 今「会話」の入った文章を書くことの意味

   ・身のまわりのひとの見方や考え方を理解する。

     その人の認識や思考の深さや広さに気づくことができる。

     その人の見方、考え方をつかむことができる。

     その人の感情や意志をつかむことができる。

   ・他人の気持ちをおしはかる力を育てる

   ・人の話を意識して聞いたり、集中して聞く力

     会話が事件や出来事のきっかけとなっていたり、展開の重要な役割をはたしていたりすることに気づくようになる。

   ・会話のなかにあるその人の考えや願いを、自分の生活に生かす力

   ・事実にもとづいて考える力。

   ・会話のはいった生き生きとした文章を書く力。(注6)

      (注6 詳しくは「会話を書く大切さを教える」『書ける子どもを育てる』田中定幸著・出版・1995年 P10 9~11 7を参照)

  この③は以前書いた『つくる・つづる』(未発表)からの引用です。前後の内容と重複する部分がありますが、③として挿入しておくことにしました。

 


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