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中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

ノーベル平和賞 

2010-10-11 09:00:05 | 中国のこと

 今年のノーベル平和賞に中国の作家である劉暁波(リウ・シャオポー)氏が選ばれた。劉氏は1989年に北京で起きた天安門事件以来、中国の民主化を訴えて来た人権活動家、民主活動家として知られていて、下馬評では受賞の有力な候補者に挙げられていたが、現在は投獄されて服役中の身だ。

 

 授賞の理由として、ノルウェーのノーベル賞委員会は「20年以上にわたり、中国の基本的人権の適用を唱えるスポークスマンと」評価し、「人権を求める幅広い闘い最大の象徴となった」としている。中国については「世界第2位の経済大国となったが、その新しい地位には増大する責任が伴わなければならない」と指摘し、「中国の憲法には言論、報道、集会、デモなどの自由が定められているにもかかわらず、市民の自由は明らかに制限されている」と批判している。

 

 これに対して中国政府は当然のことながら猛反発し,劉暁波は中国の法律を犯した罪人で、平和賞を与えるのは賞の趣旨に背きこれを汚すものだとする外務省の報道局長の談話を発表した。「中国とノルウェーとの関係も損なわれることになる」とも言い、実際に中国政府は抗議のためにノルウェーの駐中国大使を呼び出したらしい。これより前に中国外務省の幹部が賞の選考にかかわるノルウェーのノーベル研究所の所長に会い、劉氏を選べば中国とノルウェーの関係に影響が出るとして、圧力とも受け取れる警告をしたと伝えられていた。いかにもノルウェーを小国と侮るような驕慢な態度には呆れ返る。私が読んでいる新聞のコラムは「世界第2の経済大国にして、この政治的、社会的小児性は、いびつを超えて不気味に映る」と書いていたが、多くの日本人に共通した感想だろう。

 劉暁波氏はおととし、中国の民主化の必要性を訴え、共産党の1党独裁の終結や、三権分立、民主化
推進、人権状況の改善などを求めた宣言文である「零八憲章」を起草し、およそ300人の学者や弁護士らと共同でインタネット上で発表したことで国家と政権の転覆を煽る罪に問われ、今年懲役11年の判決が確定した。暴力で政権の転覆を企てたわけでなく、我々日本人からすると当然のことに思われる主張も「国家政権転覆扇動罪」というおぞましい罪になるとは何とも異様な感じだが、民主化と言うのは中国政府にとっては蛇蝎のように忌むべきものらしい。

 

 このように中国政府は激しく反発しているが、では中国の国民は受賞のニュースや、それに対する政府の姿勢をどのように知らされているのだろうか。ニュースによると、中国の衛星を使って放送されているNHKの海外向けテレビ放送は8日、劉暁波氏のノーベル平和賞の受賞が決まったというニュースを伝えていたところ、突然、画像と音声が途切れ、放送が中断したらしい。画面はノーベル賞に関するニュースが流れる間、真っ黒な状態が続き、ニュースが終わると元に戻ったと言う。このほかにもアメリカのCNNやイギリスのBBCなどが劉氏の受賞決定を伝えるニュースを放送すると、画面が真っ黒になったそうだ。明らかな情報遮断だが、これを見た中国国民はどのように思ったのだろうか。新聞も国営の新華社が政府の抗議声明だけを小さく伝えた他は各紙とも沈黙しているようだ。

 いくらテレビや新聞で情報を遮断しても、インタネットで知られていくだろうが、中国政府は
インターネットの規制を強化するなどして、国内での情報の広がりにいっそう神経をとがらせるだろうと見られている。しかし一部では、これで政府は穏健な民主化勢力にも強硬な姿勢で臨む可能性があるとして、民主化路線に打撃を与えるのではないかと危惧する声もあると言う。

 

 確かに中国は経済的には大国になり、毎年多くの予算を軍事費に注ぎ込んで、軍事大国の道も歩もうとしている。この国が金と力を頼んで外に向けては威圧的な態度で臨み、内に向けては批判を圧殺することをこれからも続けていけば、世界は警戒し、背を向けていくのではないか。真に大国としての矜持のある姿勢で、責任のある貢献をすることを世界に対して示さないと、単なる成り上がり者国家としか見られなくなるだろう。