この日記でも何度か書いた事があると思うけど、わたくし加藤は、合唱ミュージカルというものをやる「バンザイ合唱団」というところでも少しお世話になっておるのです。そこの団員であるルウという役者が地元に帰るという事で、急きょ「ルウの送別会をやろう!!!」という事になった。団長の工藤さんや、毎回台本を書いてくれる西野さんらが発起人なのだろうか、突然西野さんからメールが来て、もちろん参加しますとの返信を返す。
数日後に西野さんから詳細が送られてきた。サプライズ形式で行われるようで、当日の流れがこと細かにメールで説明されている。
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※ルウにあげる自分が好きなお菓子を1人1つ用意して下さい。
○当日の流れ
・ルウには西野さんから「何人か誘ったけど急だったから…」と4人だけの集まりだと言って、19:30に渋谷ハチ公前に集合。
・さらに直前に2人がドタキャンして、ルウともう一人、気まずい感じでとっこちゃん(合唱団団員)がバイトをしている店に移動。
・ルウがお店に到着したところで、みんなで『怪獣のバラード』を歌って華やかに迎える(1番と2番でそれぞれゲストが1人ずつ登場)。
・途中、『巣立ちの歌』を歌いながら、ルウに一人ずつ、一言とお菓子をあげる。
・最後にはみんなで『ともしびを高くかかげて』を歌う。
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という、愛にあふれた演出を考えてくられている。これはもう心していかねばならない。ルウには19:30集合と伝えてあるが、当然俺らは18:30に集合して、段取りの打ち合わせや軽い練習などがある。そして念には念をと言う事で、俺らの集合はハチ公前ではなくモヤイ像前。
当日早く来すぎてしまい、俺が一番のりだった。ほどなく他のメンバーもやってきて、久々の顔や初めての顔、10名以上の大所帯になる。俺は2回目から合唱団に参加したので初対面の方もいらっしゃる。だけど、そこはバンザイ合唱団のメンバーの不思議な魅力で、「人見知り」というものを一切感じさせない空気になるのだ。これは本当にすごいが、この俺でもスッと入れてしまうほどに、凄まじいゼロ人見知り空間になる。ゼロ見知り空間だ。
あらかた集まったところで、西野さんがやってきた。そして手にしていた紙袋から何やら取り出し「はいこれ」とみんなに配りだした。
うちわだった。
ルウの写真が貼られ、でかでかと『ルウ、行かないで!!!!!』と書かれた手作りのうちわが人数分、一人一つずつ配られる。「一人で全部作ったの????」という驚きと「え、引きとめるの????」というダブルの驚きに、もう爆笑である。そんな時、西野さんに電話が。ルウからだった。
「え、もう渋谷にいるの??」
せっかちルウはどうやらすでに渋谷にいるらしい。ハチ公前集合と言われているので、その近くにいるようだ。とりあえず西野さんはまだ仕事が終わってないと言う事にして、変わらず19:30にハチ公前集合と言う事で電話を切る。そこから俺らはすぐに、本日の会場であるとっこちゃんがバイトをする店に移動する。ハチ公前の方を抜ければ早いのだが「ルウに会ってはまずい」と言う事で、わざわざ遠回りをする。10人以上の大所帯が、何やらわからぬ女性の顔がデカデカとプリントされた手作りうちわを手にし、渋谷の街をぞろぞろと移動している様は、なかなかに異様だったと思う。
店に到着した。とっこちゃんはまだ働いていた。とっこちゃんに言われるまま奥の方へ移動する。それほど大きな店ではないが、すごく雰囲気の良い店ではある。だけど個室的な部屋はなく、ゼロ仕切りで完全筒抜けである。ここで合唱をするのか…??という当然の疑問がわき上がるが、もはや躊躇などしていられない。歌うのだ。周りのお客さんに「すみません、あとで合唱するのでうるさいと思いますが…」と、とっこちゃんが言ってまわってくれている。お客さんも快く「大丈夫ですよ」と言ってくれる。ありがたい。
そして、いよいよ19:30が近づいてくる。4人だけの集まりという事にしておき、2人は直前になってドタキャンするという流れだ。が、ここで、団長の工藤さんが「2人がドタキャンだと、ルウも帰っちゃう可能性が…」という事を言いだした。西野さんは「た、確かに…」。ここでルウに帰られたら元も子もない。これほどに元も子もない事があろうか、と言うほどに、ザ・マックス元も子もない。絶対に帰られるわけにはいかない。そこで工藤さんと西野さんはそれぞれルウに「仕事が長引いて、ちょっと何時になるかわからない…」という、ぼんやりドタキャン、かも…みたいなメールを送ることに。そして、工藤さん西野さんと共に本日ルウと飲むことになっている清水君がいよいよルウを迎えに行く。その間、俺らは段取りの再確認と、うちわの裏側が白紙になっているので、それぞれメッセージを書く事に。それ用に新しいペンを西野さんは数本買ってきていたのだ。みんな各々メッセージを書き、店に入っているのに何も注文しないというもの悪いので、各々1杯だけ飲み物を注文して勢いをつける。「来た?まだ?来ない?来た?」団長の工藤さんは舞台の本番さながらの緊張感である。と言うか「本番よりも緊張する…」と言っていた。でも確かに、ルウを待つ時の緊張感はすごかった。うちわを握る手がみるみる汗ばんでいく。。みんなルウのうちわを手にしながら、真剣な表情で入り口をにらんでいる。不思議すぎる光景である。
来た!!!!!
「わあああああああ!!!!!!!」みんなルウうちわをパタパタしながらルウを迎える。そこですかさず『怪獣のバラード』が流れる。有線を流しているスピーカーをその時だけi podにつなげてもらい、という店側全面協力体制での大合唱である。ゲストも登場。森田ガンツさんという役者の方は、ルウが来る直前までi podを聴きながら真剣な表情で歌を覚えていたのに、本番、ガッツリ歌詞カードを見ながら、音程という概念を飛び越えたウルトラハイトーンボイスで歌いきってくれた。最高だった。
その後も、ここ!!と言う時に突然『巣立ちの歌』が流れ出すと、みんな一斉にカバンをゴソゴソしてお菓子を出し、ルウに一言とお菓子を渡す。隣の席に座っていた方々はすごくノリがよく、「もう一回『怪獣のバラード』歌って下さい!!!」とリクエストまでしてくださる。もちろん俺らはリクエストに応えて、周りのお客さんも巻き込んでの大合唱である。合唱ってすげえなぁ…と素直に感じた。そして最後、いよいよ『ともしびを高くかかげて』を歌ってルウを送り出すのだ。ここで言っておきたいのだが、このメンバーで集まったのは久しぶりで、今回のサプライズ送別会で歌う歌の練習などは特にしていない。そしてこの『ともしびを高くかかげて』という歌は非常に難しい歌である。という前置きからおわかりになる通り、『ともしび高くかかげて』、まぁ、グズグズだったわけです。本当ならば、最後の曲ですから、歌い終わった後、みんなで「また一緒に合唱やろうね!!!!」みたいな事を言う所でしょうがね、実際は、歌い終えて、団長思わず
「ひどい!!!!!」
ですよ。確かにひどかったですわ。それでも「ともしび難しいからね」と、楽しく終わりました。とてもステキな会だった。ステキなメンバーだ。はやくまたみんなと一緒に合唱したいな。俺の勤務先の学校でも出来るよう売りこまねばなぁ。いい夜だった。だけど、俺の夜はまだまだ終わらないのだった。これはまた次の日記で。