酔いどれ反省会

反省出来ない人の反省文

「いつもコメントありがとうございます」

2021年03月11日 21時51分36秒 | 日記
彼は、今日も一人で呑んでいる。

一人暮らしの部屋で、一人で吞んでいる。

彼はテレビを持っていないので、PCでYouTubeを見る。

可愛い女性が一人でお酒を呑んでるような動画をよく見る。

きっと一緒に呑んでるような気分が味わえるのだろう。

「寂しいやつ」「わびしいやつ」と思うだろうが、

そういう動画は、このように「一緒に呑んでる気分を味わってもらえるように」

という思いもあるはずだから、需要と供給がマッチしてるからいいんだ!と彼は言う。

それを「寂しい」「わびしい」と言うのなら、動画を撮っている人に対しても

「寂しい」「わびしい」と言う事になるんだぞ、と、よくわからない事も彼は言う。

彼は最近、またお気に入りのYouTubeチャンネルを見つけたらしい。

まだチャンネル開設して間もないらしく、登録者数も少ない。

登録者数が少ないと、コメントの返信もマメに返してくれるらしい。

それで彼は、そのチャンネルの動画をたくさん見ては、たくさんコメントするようになった。

律儀に、丁寧に、コメントが返ってくる。

自分の存在が認識される嬉しさからか、彼は何度もそのチャンネルの動画にコメントをするようになる。

チャンネル登録者がまだ少ない側からすると、一つ一つのコメントはまだ嬉しいかもしれないし、

無下にも扱えないなぁ、という事もあるのだろう、毎回丁寧に返信をしてくれるようだ。

「もういい加減やめなよ」と、誰かが言う。

いや、別に、好きでやってるから。と彼は言う。

YouTubeにコメントを残して、自分を認識してもらって、それで、その後、奇跡的にどうこうなろうなんて、そんなこと、、、そんなこと、別に別に、、べべべ、別に、かかかかかっか、考えて、ないから!!!!と、彼は言う。

その日も彼は動画にコメントを残した。

翌日、チャンネルの主から返信が来た。登録者数が少ないから、返信が来る速度が速いのが、また身近に感じてしまう要因だと、彼は言う。

その日の返信には、冒頭にこう書かれてあった

「いつもコメントありがとうございます」と。

何度も何度も何度も何度もコメントをしていれば、そう言われるだろう。

そしてそれは、相手からしたら好意的な返信なんだろう。

しかし彼は、そのコメントをもらった時に、こう思った。

「あれ、、ぼく、何やってんだろう...」と。

「いつもコメントありがとうございます」。

彼は確かに、いつもコメントをしていた。

コメントをする事で、どうこうしたいなんて考えてませんよと思いつつも、

心のどこかで、どうこうしたいと考えてしまう自分が嫌だなぁと思っていた。

彼は、自分の心の中だけで起こる事は、どうにか無視する事が出来た。

それが、外側から「いつもコメントありがとうございます」と言われた。

「僕は、、いつも、、、、コメント、してたんだ、、、、」と、今さらながら、彼は思った。

いつも行く居酒屋で、店員から「毎度どうも!」と、常連扱いされたら急に行けなくなる、

という話を聞いたことがあるが、それに近いものがあるのだろうか。

「僕は、このチャンネルの常連になってしまった...」と彼は思った。

もう、見まくってるし、コメントしまくってるし、まごうかたなき常連なのだが、

「いつもコメントありがとうございます」と言われたことで、

外側から「あなた常連ね」と言われた気分になってしまったようだ。

「常連になることが嫌なのではない」と彼は言う。

ただ、いつも一人で酒を呑んで、

可愛い女子が酒を呑むYouTubeチャンネルを見て、

ヘラヘラしている自分を、急に、ぎゅいーーーーーーんと、引いて見てしまった、らしい。

「いつもコメントありがとうございます」。

普通なら嬉しい返信であるはずなのに、それをもらって彼は

「僕、、、何やってんだろ、、、、」と思った。

彼は、インターネットを閉じて、パソコンにDVDをセットした。

それは「ブルースブラザーズ」だった。

彼は、ブルースブラザーズを見ながら、少しだけ、泣いた。
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