Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2020年11月号 マスクとソーシャルディスタンス、カクマの難民には不人気

2021年01月23日 | コミュニティーとカルチャー
【写真】大勢の人であふれかえるキャンプ1セクションの市場。人びとはマスクを着用しておらず、ソーシャル・ディスタンスも取れていない。撮影:トロッサ・アスラト / KANER

KANEREスタッフライター トロッサ・アスラト

防護服が生命を守り、ソーシャル・ディスタンスが感染症の流行を抑制することは、科学的に証明されている。ところが、新型コロナウィルスの感染が急速に拡大する現在も、カクマやカロベイエイで生活する難民たちは積極的にマスクを着用したりソーシャル・ディスタンスを取ろうとしていないようだ。

【写真】大勢の人であふれかえるキャンプ1セクションの市場。人びとはマスクを着用しておらず、ソーシャル・ディスタンスも取れていない。撮影:トロッサ・アスラト / KANERE

難民たちが暮らすコミュニティで新型コロナウィルス陽性者が初めて公式に確認されたのは2020年5月29日だったが、10月中旬までには同地域で52人が陽性と判明。その後も陽性者数は増え続けている。

関係機関が新型コロナウィルスについて積極的な啓蒙活動をしているにもかかわらず、人びとがマスクを着用したりソーシャル・ディスタンスを取っている様子は、ほとんど見られない。このような行動をしていると、人が集まりやすい次のような場所では感染の危険が特に高まる。

・カクマ1にあるソマリア・マーケット
・カクマ1にあるエチオピア・マーケット
・リザフア・マーケット
・カクマ3のレセプションセンター近くにあるマーケット
・ビレッジ1、ビレッジ3にある新しい居住者たちのマーケット
・給水場所および食糧配給所

全国紙に掲載された最近の報道では、トゥルカナも新型コロナウィルス感染者が特に多いホットスポットとして名前をあげられ、ロックダウンが行われる可能性が出てきているようだ。難民キャンプではすでに、地域住民の安全対策として4月29日から部分的なロックダウンが行われている。

関係機関やコミュニティを基盤として活動する団体では、新型コロナウィルスの感染拡大という緊急事態に対処するため、5月から7月にかけて、少数ながらコミュニティ内の共同利用場所に臨時の手洗いタンクを設置し、コミュニティの住民だけではなくその場所を利用するすべての人に手洗いの機会を提供してきた。

ところが、新型コロナウィルスの感染者数が増えているにもかかわらず、難民キャンプの住人たちの多くは、積極的にマスクを着用したりソーシャル・ディスタンスを守ろうとしない。理由は何であれ、このような行動を続ければコミュニティ内での感染はいずれ拡大してしまうだろう。

「マスクを着けながらバイクを運転するなんて、自分がカクマの警察署に拘留されているような気がします。この気温の中でヘルメットをかぶっているのに、マスクまで着けることを想像してください」と話してくれたのは、バイクを運転するブルンジ人のアルフェレッドだ。ケニア公衆衛生法では、バイクの運転者と同乗者の双方にマスク着用が義務づけられており、違反者はバイクの引き渡しと2万ケニアシリング以下の罰金あるいは6か月以下の収監の両方、またはいずれかの刑に処せられることになっている。

Mペサのサービスプロバイダーであるサミは、新型コロナウィルスの流行はおおむね終息していると考えており、「この気温でマスクを着けるのは苦痛だよ」と話した。

それでも、国連難民高等弁務官事務所やパートナー団体などでは、この緊急事態に合わせて職場の環境対策を整え、訪問者にソーシャル・ディスタンス確保の徹底とマスクの着用を義務化している。


【写真】キャンプ3セクションのメモリアルパークで行われた葬儀に参列する人びと 撮影:トロッサ・アスラト / KANERE

ブルンジ人のバイク運転手エヴァは、カクマ3の墓地に大勢の人がいるのを目撃している。キャンプ4へ通うエヴァは、「カクマ3ブロック12で葬儀に参列するたくさんの人たちを毎日のように見かける」と話す。同地域は多様な文化的背景を持つ人たちが暮らすコミュニティで、南スーダン出身者やアフリカ大湖地方のコミュニティに属する人たちが特に多い場所だ。

南スーダン人の宗教指導者アケッチ・アコンは、junub(アラビア語で肌の色が濃い人)の体内では、新型コロナウィルスも死滅してしまうと信じており、南スーダン人からは新型コロナウィルス感染者は一人も出ていないと考えている。

経済の衰退を食い止めるために規制が緩和されたことも、必要な感染予防をすることへの関心が薄れた原因のひとつだろう。

ゾーン2キャンプ1の女性議長マルタは、夜間外出禁止令とロックダウンに加えて公共の場所におけるマスク着用義務化を徹底する政策は、人びとを感染の危険から守ると考え、最近行われている警察官によるコミュニティ内のパトロールを好ましく思っている。公衆衛生法(cap.242 laws of Kenya)では、公共の場でマスクを着用することが国内にいるすべての人に義務付けられている。

KANEREのオフライン放送担当者アブディは、「世界中で新型コロナウィルス流行の第2波に備えているときに、カクマの難民たちは完全に気が緩んでいます。警戒してもらう必要がありますが、どうすればいいか私にはわかりません」と話していた。

国連難民高等弁務官事務所やパートナー団体では、感染症の大規模な流行について警戒を促すメッセージを文章にして多言語で提供もしている。2020年7月に出された内容は次のようなものだ。「ロックダウンの規制が緩和されたら、新型コロナウィルスの流行は終息したと考えていいのでしょうか。いいえ違います。ウィルスの威力を管理できるワクチンや薬が見つかるまでは、新型コロナウィルスは私たちの周りで活動しています」

ドイツ国際協力公社市民平和支援プログラム(GIZ-CPS)とフィルム・エイドの職員たちは、ウィルスの流行がいかに危険な状況かをオフライン放送という手段を使って対象としている人たちに発信している。

ドイツ国際協力公社市民平和支援プログラム(GIZ-CPS)、ケニア・コミュニティ・メディア・ネットワーク(KCOMNET)、KANEREは、拡声器を搭載した車でコミュニティを巡回し警戒を呼びかけているが、難民たちの多くはマスクの着用やソーシャル・ディスタンスを保たなくなっていた。この状況が改善されたのは、10月26日にカクマ1エリアにケニア警察が介入するようになってからのことだ。

「キャンプで暮らす難民たちは、警察車両を見てようやくマスク着用を思い出したようだ」と、カクマ1のリーダーであるサビルは話していた。

最近の警官の行動がきっかけとなり、人びとはマスクを着用するようになった。ただ、マスクを清潔にしておくことにはまだ無頓着のようだ。人びとが着用しているマスクの多くはキャンプでつくられた布製のもので、マスクが清潔かどうかは使用者が定期的に確認しなければならない。

国際救済委員会のインセンティブ・ヘルス・オフィサーであるサムソンは、「キャンプ内の回復者数と死者数の割合も含めた報告書を公表すれば、人びとの新型コロナウィルスへの対処法が変わるかもしれない」と言い、多くの人が対策に消極的なのは、身近な人の中に新型コロナウィルスの感染者や死者が出たという話を見聞きしていたいからだと考えている。


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