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Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2013年11月号 指紋照合

2014年05月28日 | 人道支援
カクマの難民は、すべての食料配給センターにおいて、指紋採取に応じなければならない。

2013年6月初めに、UNHCRはWFPと共同で、難民への食糧配給時の照合作業に、指紋の導入を開始した。この新方式が導入されたのは、食料配給制度を悪用する事件がしばしば伝えられる中、配給する側と受け取る側の間で説明責任を明確にするためだった。実際、何年もの間、食料配給の際に、審査も監視も殆ど行われてこなかった。

現在、UNHCRは指紋を利用して、難民をデータベースに加えたり削除したりしている。難民や庇護希望者の指紋は、難民資格の審査過程や移動や旅行許可証の発行の際に、照合される。しかし、カクマキャンプが創設されてからこれまでの22年間、難民が食料の配給を受けるときには、基準の配給カードを使ってきた。これはキャンプ内だけで通用するIDカードで、写真や指紋などは記載されていない。

カクマの難民は配給センター(FDC)で、世界食糧機構(WFP)から食糧を受け取る。月に2回、15日間隔で配られる。食糧は通常13日くらいで底を尽いてしまうので、難民たちは15日目の食料配給日を待ちきれずにいる。

UNHCRとWFPは長い間、食糧を受け取る権利を示す有効な配給カードの目録やリストを交換し合って管理していた。難民の中には、自分のものでない沢山の配給カードを持っている人もいて、彼等は、配給の度に簡単に多量の食糧を集め、長年にわたって難民や地域住民に売りさばいたり、時にはケニアの都市にまで運んだりしてきた。

新しい指紋システムでは、カードの持ち主だけが食糧配給を受けられる。「指紋が合わなければ食料はもらえない」


【写真】辛抱強く配給を待つ難民たち

実践運用は、UNHCRとWFP、それに食糧支援団体によって公式に始まった。彼らは、どの番号の難民が、どの配給日に配給を受けるかを記録した帳簿を基に、誰がどのくらいの量を受け取るかを決めていった。

配給側にとっては、オンラインのシステム構築により、現場での評価と実践が一層やりやすくなる。食糧配給時にFDCで採取された指紋は、直ちに3つの事務所に伝えられ確認される。

一方、難民たちは、3つの支援組織がケニア政府に個人情報を漏洩するのではないかと危惧している。かつて2007年から2008年にかけて、同じようなシステムが試行されたことが有るが、個人情報の管理への不安から難民が反対し失敗した経緯がある。今回は、このシステムの導入が強制的だったため、難民たちは応じざるを得なかった。

「難民は配給を得るために指紋を押捺しなければならないことに不安を感じ、迷惑だと思っている」あるリーダーはKANEREにこう言った。

「私はこの考えに反対だったが、無理やり指紋をとられた。UNHCRや支援団体がなぜ指紋採取に積極的なのか私にはわからない。こんなことは早くやめて、難民を保護すべきだ」と アリ・モハメドは話す。

KANEREのレポーターは二回、WFPの事務所に行き、インタビューを申し込んだが、何れも応じてもらえなかった。

難民が食糧配給の権利を得るために指紋採取に応じなければならないのは迷惑で気が進まないのはよくわかる。しかしUNHCRとの会話の中で、新システムのねらいは、受益者と支援団体を含む食糧供給者の間で、透明で扱いやすいデータベースを構築することにあることが判った。

もうひとつの問題として、もし難民が2回続けて食糧を受け取らなかった場合には、その個人或いは家族の配給カードが無効になってしまうことがある。これは、生活のためにキャンプの外で働こうとする難民にとって恐ろしい事態となる。ケニアの難民法では、難民は自分達の望むところに住み、働くことが認められている。しかしながら、この権利は、難民保護当局には理解されていない。難民は、外への旅行が認定されない限り、指定されたキャンプの中に留まらなければならない。

色々な理由でキャンプの外に出て行った難民は、人であふれ危険が一杯のキャンプに戻らなければならない。不適当な配給のために、カクマに戻れないと言う難民もいる。「私はナイロビに9年間住んでいます。UNHCRがなぜ人々をキャンプに戻らせようとするのかわかりません。キャンプでは一定量しか配給されず、質も悪いのだから」ナイロビにいるエチオピア難民のアベベ氏は言う。

WFP食糧諮問委員会のメンバーによると、指紋採取が始まってから25,000の配給カードが無効化されたという。しかしながら、UNHCRによると、UNHCRのデータベースから削除されるのは15,000しかないとのことである。「まだ配給を受け取っていない人が15,000人いる。これらの人はキャンプにはいないと思われる」UNHCRの担当官は、FDC3の配給センターでこう発表した。 

匿名を希望するある難民リーダーによると、同調者の少ない新システムに、反撃が企てられているという。「我々はこのシステムを歓迎していない。この不快なキャンプに難民を否応なしに連れ戻すための策略だ。しかも食糧配給量は、新システムが導入されて以来、減ってきている」難民リーダーは、配給センターの外に出てからこう言った。

別のリーダーが付け加えて、「全体の成り行きに失望している。当局は難民たちにキャンプに戻るよう強く求めているが、多くの人は就業のために都心に出て行く。帰る気になれない」と話した。

カクマキャンプが設立されてから22年が経つが、指紋による食糧配給管理は、カクマとダダーブのキャンプでやっと今端緒についたばかりである。この動きは、食糧配給管理に責任と透明性を促すものと思われるが、どうしてこんなに開始が遅れたのか? 

食糧配給に難民の指紋を強制的に提供させることで当局にどのような便益があるのか? 難民の心の中にくすぶり続ける疑問である。


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